充実する国内充電インフラ、「電動車両第2世代」投入の舞台は整った:和田憲一郎の電動化新時代!(15)(3/5 ページ)
ここにきて電気自動車/プラグインハイブリッド車といった電動車両用の充電インフラが総合的に充実しつつある。日本充電サービス、チャデモ協議会、電動車両用電力供給システム協議会という、充電インフラに関わる3つの企業・団体への取材により、2016〜2020年にかけての投入が予想される「電動車両第2世代」投入の舞台が整いつつあることが分かった。
国内の急速充電器設置数がついに5000基を突破
次にチャデモ方式急速充電器に関わる規格策定とインフラ普及を目指し活動しているチャデモ協議会 事務局長の吉田誠氏と同事務局の丸田理氏に、現在の活動内容や今後の展開を聞いた。
和田氏 国内に設置されているチャデモ準拠の急速充電器は、2015年5月末時点で5400基を超え、海外も含めると約8600基に達している。なぜ急速に設置数が増加してきたのか。
吉田氏 理由は幾つかあると思われる。まず国内では、政府による充電インフラ普及に向けた補助金に加えて、自動車メーカー4社の支援プロジェクトも合わせると、所定の条件を満たした場合にイニシャルコストが実質的にゼロになるなど、一気に普及に向けた環境がそろった。
また欧州では、チャデモ対コンボの規格争いの話があったりして、将来どちらに転ぶか分からず、設置者側がちゅうちょしていた面があった。しかしこの規格争いの話が(チャデモもコンボも国際標準に含める形で)決着したので、チャデモ方式の急速充電器も安心して設置できるようになった。その結果、チャデモとコンボの両機能を兼ね備えたマルチ方式が主流となり、充電インフラに関わる企業もこれで大丈夫との安心感が生まれ、ビジネススキームも見えてきたことが大きい。
和田氏 2015年度末(2016年3月)までの世界全体での普及見込みは。
吉田氏 はっきりと予測することは難しいが、少なくとも上期時点で1万基を超える勢いになっている。そうなると、2015年度末の普及台数では1万3000〜1万5000基が目安となる。なお、日本国内だけでなく欧州における設置数が大きく伸びている。これは、欧州の自動車メーカーが充電インフラ普及に本気で取り組み始め、EVやPHEVの市場が拡大し始めていることが大きい。
100kWへの大出力化を検討
和田氏 チャデモの規格として今後何か変更の予定はあるか。
丸田氏 EVに搭載されるリチウムイオン電池の高性能化/大容量化に対応すべく、充電出力を現在の50kWから100kWにまで引き上げることを検討している。実施時期は、おそらく1年以内になるだろう。
和田氏 他に新たな機能追加もあり得るか。
吉田氏 ドイツの自動車メーカーが開発したコンボシステムは、チャデモとの互換性を持たせるため、コンバージョンBOXと呼ばれるアダプターを開発している。ユーザーはそのアダプターにコンボのコネクタを差し込むだけで接続可能となるものだが、チャデモ方式の急速充電器側にトラブルが発生してもいけないので、現在協調して技術検討を行っている。
また、日本国内で導入が始まったV2H(Vehicle to Home)については、欧州でも家庭用のニーズはあると思うので、関係企業と話を始めている。
和田氏 2015年6月にチャデモ協議会の総会が開催されたが、その際のトピックは。
吉田氏 2015年のテーマとして、充電ステーションのスマート化を図りたいと考えている。充電待ち時間の予測や、最新の設置場所への案内などである。それ以外でも1基の急速充電器から3台の電動車両に同時に充電できるなど、トリプル式の充電方法なども検討している。
2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックでは、選手移動などに電動車両を使うだけでなく、蓄電池として利用するなど大会会場のゼロエミッション化にも貢献したい。
和田氏 今後の課題は。
吉田氏 現在、いろいろなモノがインターネットとつながるIoT(モノのインターネット)化が進んでいるので、急速充電器についても、クルマと接続した状態でいろいろ役立てられるように検討を進めていきたい。また不具合などの情報もタイムリーに出し、ユーザーの利便性を高められるようにしていきたい。
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