成人T細胞性白血病に対する新たな複合的ワクチン療法の治験を開始:医療技術ニュース
九州大学病院は、成人T細胞性白血病(ATL)に対する新たな複合的ワクチン療法の治験を開始した。九州大学らの共同研究グループが開発した樹状細胞ワクチン製剤をATL患者に投与し、その安全性を評価するという。
九州大学は2015年6月19日、九州大学病院で、成人T細胞性白血病(ATL)に対する新たな複合的ワクチン療法の治験を開始したと発表した。治験では、九州がんセンター、九州大学、東京医科歯科大学などの共同研究グループが開発した治験薬を用いるという。
ATLは、リンパ球に成人T細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)が感染して起こる難治性の血液がんとなる。HTLV-1に感染したリンパ球であるATL細胞の表面には、正常なリンパ球にはないウイルス蛋白(Tax)が現れるため、同研究グループでは、Taxを標的とする樹状細胞製剤(ATL-DC-101)を作製。ATL-DC-101は、患者の体内で他のリンパ球に指令を出し、Tax抗原を目印としてATL細胞を攻撃させるという。
またATL-DC-101は、患者の血液から取り出した白血球の一部(単球)を培養・分化させ、Tax抗原のペプチドを添加した樹状細胞ワクチン製剤のため、皮下投与することでATL細胞に対する免疫の活性化が期待されるという。さらに、抗CCR4抗体の併用により、CCR4を発現する制御性T細胞を排除し、樹状細胞ワクチンの効果が高まることが考えられるという。
今回の治験では、既に治療を受けているATL患者を被験者とし、ATL-DC-101単独、または抗CCR4抗体との併用の安全性を評価する。まずは九州大学病院と九州がんセンターで治験を開始し、段階的に東京医科歯科大学、名古屋市立大学でも実施する。ATL-DC-101は、九州大学先端医療イノベーションセンターの細胞調製センター(CPC)が製造する。
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