量子電池「バテナイス」は夢に終わるのか、多くの技術的課題が発覚:電気自動車(2/3 ページ)
化学電池も、物理電池も超える“量子電池”として話題をさらった日本マイクロニクスの「バテナイス」。しかし、多くの技術課題が見つかったため、研究開発体制を変更することになった。
研究開発体制を変更する理由
しかし2015年6月24日、日本マイクロニクスから「二次電池batteniceの研究開発体制の変更に関するお知らせ」というリリースが発表された。
発表文は、確かにバテナイスの研究開発体制を変更する内容になっていたものの、その理由こそが最も大きなニュースと言っていいだろう。バテナイスが達成可能としていた目標性能は現時点で達成しておらず、その他の技術的課題も見つかったというのだ。
バテナイスは、グエラテクノロジーというベンチャー企業が開発した「グエラバッテリー」という技術がベースになっている。グエラテクノロジーはガラス基板上に小面積でしか試作できなかったものを、日本マイクロニクスの技術を用いて金属薄膜上により大型のものを製造できるようにしたものをバテナイスと呼んでいる。研究開発体制も、グエラテクノロジーが基礎性能向上を、日本マイクロニクスが量産化技術を担当するという体制になっていた。
今回の発表では、バテナイスの研究開発体制のうち、基礎性能向上の担当からグエラテクノロジーを外し、複数の大学との共同研究に切り替えることになった。このため、日本マイクロニクスとグエラテクノロジーのバテナイスに関する契約内容は、共同研究開発契約から、グエラテクノロジーが持つ特許やノウハウなどのライセンス契約に移行する。
ではなぜ複数の大学との共同研究に切り替えなければならないのか。それは、「グエラテクノロジーはバテナイスの目標仕様達成に向けた基礎性能向上のための研究を進めてきたが、現時点においては、目標仕様が達成されるかが定かではなく、当社の今後の開発計画に支障を与える可能性が出てきた」(日本マイクロニクス)からだ。
日本マイクロニクスの発表文にある「目標性能に対する達成状況」では、エネルギー密度と出力密度が、目標性能の10分の1以下にとどまっている。ただし書きで「充電層単独では」という性能数値が併記されているものの、基材層を含めた性能でなければ二次電池として評価することはできない。
サイクル寿命も、ガラス基材の場合で目標の10万回を達成したとしている。しかし、当初予定の金属薄膜基材ではない上に、10万回の充放電サイクルの後、エネルギー密度が40%まで低下したという。一般的なリチウムイオン電池でが、容量が当初の80%まで低下するまでを“寿命”としていることを考えると、10万回という数字から差し引きする必要があるのは確かだ。
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