設計と製造を結ぶ国産タッグが始動、和製モノづくりITは世界に羽ばたくか:製造マネジメント インタビュー(2/3 ページ)
図研と東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)が2015年2月設立した合弁会社「ダイバーシンク」がいよいよ始動する。第一弾として図研の「visual BOM」をOEM提供で、B-EN-Gの製造系ERPシステムである「MCFrame」に加えて連携を進める。協業の目的と現状の取り組みについて、ダイバーシンクの代表取締役の上野泰生氏(図研 常務取締役)と取締役の羽田雅一氏(B-EN-G 常務取締役、CMO、CTO)に話を聞いた。
なぜ「設計」と「製造」を結ぶことができなかったのか
MONOist 今まで課題として認識されてきたにもかかわらず、なぜこれまではこの問題を解決できなかったのでしょうか。
上野氏 製造業の組織的な壁があった点が大きかった。例えば設計ツールなどは、技術本部などへ提案して採用されることが多いが、SCM(サプライチェーン管理)システムなどは生産本部や生産技術部門などに導入する。一定規模以上の製造業であれば、もともと管轄する組織が違っているという問題がある。
また、文化的にも製造業であれば「製品」が最も重視されるため、設計部門が強い立場にあるケースが多い。設計部門から製造部門への申し送りなど、情報の流れはあっても、製造部門から設計部門へのフィードバックがあり、その情報を効果的に活用するような仕組みを持つ製造業はそれほど多くない。ただ、それはあくまでもその企業の中だけの話であり、この組織間の壁が最終的にエンドユーザーにとってはプラスになっていない場合が多かった。
羽田氏 製造部門側の意識としては設計側と一体で考えることのメリットや、そうでない場合でのデメリットなどは以前から意識されてきた。しかし、日本の製造業では、高い現場力があるため、製造部門は「こんなもの作れない」や「製造を分かっていない」などとぼやきながらも、設計の高い要求をこなしてしまうとことが毎回のように行われてきた。一方では、こうした文化が製造業の現場力を高めてきたという面があるが、グローバルで考えた場合に状況が変わってくる。
日本人が日本で生産する場合には、難しい製造方式でも何とかしてしまう技術力や創意工夫がある。しかし、海外工場の場合は一定のスキルの望むのは難しい上、現場で創意工夫をして改善活動を進めていくようなレベルに達するには、相当の期間継続的に教育活動を実施しないと無理だ。そう考えた時、製造でミスが出ないような設計であったり、製造現場で作りにくい点や部材の問題などをすぐにフィードバックできる仕組みだったり、が重要になる。設計は国内、製造は海外といった場面が増える中で、これらの仕組みを可能にするのはITシステム以外にあり得ず、設計と製造のシステムを一体化して扱えるようにすることは非常に重要になってくる。
IoTの発展も後押し
MONOist IoTによる製造業のビジネスモデルの変化なども指摘されます。製品の変化なども要因としてはあるのでしょうか。
上野氏 IoTそのものに関するシステムとしてはやや遠い位置にいると考えているが、IoTを実現するセンサーなどの製品の設計や、これらを組み込む製品の設計などには深く関わってくる。例えば、製品の利用状況などを把握して次世代モデルからの設計内容を変更するというような場合でも、そもそも設計と生産のシステムが結び付いていなければ到底難しい。
一気にIoTや、製品のサービス化を実現するシステムを構築できるわけではないが、その一歩としてまず設計と製造を一体化することが重要だと考えている。将来的にはIoT製品の新たなビジネスモデルを支えるITシステムを提供できるようにしていくことも考えている。「プロセスの効率化と差別化」「プロダクトの効率化と差別化」の両面で貢献できるようにしていきたい。
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