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鯖江から世界に飛び出す“かっこいい老眼鏡”、自社ブランドで起こした革新のカギ【前編】zenmono通信(3/3 ページ)

モノづくり特化型クラウドファンディングサイト「zenmono」から、モノづくりのヒントが満載のトピックスを紹介する「zenmono通信」。今回は、西村プレシジョンの西村昭宏氏にお話をうかがった。

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薄さ2mmの老眼鏡ペーパーグラス!

西村氏 続いて西村プレシジョンなんですけど、実は創業が1993年で2015年で21期目になる会社なんです。先ほど紹介させていただきました西村金属が作るネジとか丁番を、中国に輸出する貿易の会社として創業しました。当時まだ中国ではネジや丁番という精度が必要な部品が作れなかったんですね。

 事業の内容としては、現在も精密部品の卸という貿易事業は継続してやっていますが、それ以外に今日の本題ともいえる「老眼鏡ペーパーグラス」という製品の企画・製造・販売を行っております。従業員数は最初は1人だけで始まりましたが、ペーパーグラスをやりだしてから6人まで増やしまして、売上高は1億6000万円ぐらいになっております。

 これがたたむと薄さ2mmになる老眼鏡っていうことで2013年のグッドデザイン賞でBEST100に選ばれた商品になります。


西村プレシジョンが開発した「老眼鏡ペーパーグラス」

enmono これは開発にはどれくらい時間がかかったんですか?

西村氏 ベースとなる技術・アイデア自体は10年前に存在しておりまして、2008年のリーマンショックを機に自社ブランドを立ち上げたいという思いで開発しました。全体的な商品構成だとか、コンセプト作り、色、形、あと値段含めてのブランディングを決めていって、実際に立ち上げたのが2009年の9月。

enmono それは西村さんお1人で?

西村氏 そうです。どの部分がグッドデザイン賞で評価されたのかをお話させていただければと思うのですが、一般的な老眼鏡で指摘される問題点は「持ち運びが煩わしい」「着け外しが多いのですぐ壊れてしまう」「おしゃれな物が少ない」という3つです。

 われわれのペーパーグラスが目指したものは、それに対して極限の薄さで携帯性を実現しつつ、堅牢性があり、使い勝手も良い、そしておしゃれである――そういう老眼鏡です。グッドデザイン賞で最終的に評価されたのは、これによってライフスタイルが変わるという部分ですね。

 老眼鏡ってすごくネガティブなイメージで、そもそもシニアライフっていうのはすごくネガティブな印象になりがちというのが現状だと思うんですね。でもこのペーパーグラスという商品を持つことで、ネガティブなシニアライフがアクティブに変わる。それぐらい価値を持った商品だということが一番評価されたポイントでした。

 今まで老眼鏡って自慢してかけられるものではありませんでした。しかし、このペーパーグラスを持つことで老眼鏡というものを自慢できるようになる。実際自慢してる方もいらっしゃいました。「これ、ペーパーグラス」って。それぐらい社会に対してのインパクトがあるということが評価されました。

enmono あと、アジアのデザイン賞も受賞されてましたよね?

西村氏 このグッドデザイン賞とは別にまたアジア全域の「アジアデザイン賞」というのがあるんですけども、その中でも2014年度のブロンズ賞をいただきました。2015年1月31日には、このペーパーグラスだけを販売する直営店を福井駅前にオープンしました。

enmono ぺーパーグラス……だけ?

西村氏 だけですね。ペーパーグラスしか置いてないです。


福井駅前にオープンした老眼鏡ペーパーグラスの直営店

enmono すごい、結構思い切ったというか……。福井駅から徒歩何分くらいですか?

西村氏 福井駅から徒歩5分くらいのところですね。ペーパーグラスは自ら作って、自ら販売するんだというところからスタートしているんです。発売当初からインターネットによる販売がメインなんですけども、やっぱり「現物が見たい」「実際手にとって購入を判断したい」という顧客はたくさんいらっしゃいます。そういう顧客になんとかお応えしたい、現物を手にとって試して購入できる場所をと考えて、まずは第1号店を福井に作りました。

enmono どこかに置いてもらうということは?

西村氏 もちろんそういった販売店もあります。それに加えて直営店もという形です。

後編に続く)

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