タイヤの転がり抵抗を測る日本唯一の“原器”は小平市にあった:タイヤ技術(2/5 ページ)
東京都小平市にあるブリヂストンの中核研究開発拠点「技術センター」には、新たなタイヤを開発するためのさまざまな試験装置が設置されている。同社が報道陣に公開した、タイヤの転がり抵抗を計測する日本唯一の“原器”と呼べるような標準試験機や、時速400kmで走行中のタイヤの接地面を計測できる「アルティメットアイ」などについて紹介しよう。
無響室の基礎部に免震ゴムと空気ばねを組み込んである理由
まず紹介するのは無響室と残響室である。無響室とは、部屋全体を覆うくさび型の防音材で音を吸収することにより、反射音による影響を除去して、音の計測を行える部屋のことだ。
ブリヂストンの技術センターには、無響室が2つある。1つは、残響室とともに、施設の基礎部に免震ゴムと空気ばねを組み込んで周辺からの振動の影響を軽減できる構造になっている。空調を使わない場合の暗騒音は20dBで、「静かな場所が40dBとされているので、それよりもはるかに小さい」(同社の説明員)という。
なお、ここで言う「周辺からの振動の影響」というのは、技術センターの前を通る府中街道を走る自動車によるもの。無響室と残響室が入っている建物が府中街道に面した場所にあるため、このような対応をすることになったようだ。
この無響室では、最新製品であるGR-XIに採用したダブルブランチ型共鳴器の効果をデモンストレーションしてみせた。走行中の自動車のタイヤからは、ロードノイズと呼ばれる、路面の凹凸によって発生する中・低周波数の音と、パタンノイズと呼ばれる、タイヤの溝と路面の間で共鳴して発生する高周波の音が発生する。ダブルブランチ型共鳴器は、パタンノイズを低減するために開発されたものだ。これにより、2000年ごろに発売した従来品の「GR-7000」と比べて、騒音エネルギーを60%近く低減できているという。
無響室におけるGR-XIから発生する高周波音の測定は、タイヤを高速回転させて行うわけではない。GR-XIに自動車に装着した場合と同じ荷重を掛けた上で、走行中と同じ状態を再現できるようタイヤの溝部に空気を送り込み、共鳴によって発生する音を計測するのだ。
デモでは、1本のGR-XIを使って、通常状態の踏面と、ダブルブランチ型共鳴器を埋めて効果をなくした踏面で発生する音を比較した。実際に、ダブルブランチ型共鳴器によって、耳ざわりな周波数1kHz周辺の高周波音の発生が抑制されていることが分かった。
この無響室の隣には残響室が設置されている。残響室は、無響室とは正反対で、発生した音が壁で反射する音が互いに干渉しないように、壁の角度などを計算して設計されている。このため、発生した音による響きの影響を計測するのに最適だ。
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