自動車業界にもアップルとフォックスコンのような完全水平分業の時代が来る?:クルマから見るデザインの真価(4)(3/5 ページ)
自動車の開発に必要な部品や素材、それらに関する技術開発の動向を見ることができる展示会「人とくるまのテクノジー展」。2015年の同展示会でプロダクトデザイナーの林田浩一氏が感じたのは、メガサプライヤの存在感の大きさだった。今後、メガサプライヤと自動車メーカーの関係はどうなっていくのだろうか。
気になったもの:樹脂素材の動向
樹脂素材は、デザイナーとして接する素材の中でも、クルマに限らずポピュラーなものである。クルマというもので見ていくと炭素繊維強化樹脂(CFRP)のような新素材の動向であったり、加工・成型方法、加飾技術などが展示会ではチェック対象となっている。
クルマでは軽量化は近年での自動車技術開発テーマの1つである。軽量化の素材としてCFRPは古くて新しい素材であるが、より効率的に作る方向の研究開発が進んできている印象である。会場では東レや三菱ケミカルホールディングスといった国内の主力サプライヤの他に、マクラーレンのモノコックを持ち込んだドイツのMubea(ムベア)グループのMubea Carbo Tech(ムベアカーボテック)の展示に興味をひかれた。
これまでCFRPを軽量化ボディの素材として採用してきたのはレーシングカーや少量生産のスポーツカーが中心だった。これは製造工法が、プリプレグと呼ばれる中間材料を必要とすることをはじめ、時間と人手が掛かるがために、コスト高と同時に量産向きでないオートクレーブ工法が中心だったことにある。例えばフェラーリは、「F40」以降、スペチアーレと呼ばれる限定生産のモデルではCFRPボディを採用しているが、量産モデルでの軽量化の手段としてはアルミボディを採用している。
しかし近年で変化してきたのは、金型で成型するRTM(Resin Transfer Molding)やSCM(Sheet Molding Compound)といった工法が開発されたことで、量産車への採用が進んでいることだろう。
RTM工法の登場により、BMWの電気自動車「i3」のように500万円前後の価格帯のクルマにもCFRPボディが採用されるようになってきている(i3はアルミ材のフロアにCFRP製のキャビンが載る構造)。CFRPへの取り組みに関しては、BMWやVolkswagen(フォルクスワーゲン)グループなど高価格帯のモデルやブランドを持つ欧州勢の方が現状では活発な印象だ。製造工法のバリエーションが増えてきている分、CFRPを扱う各社の展示で紹介されている用途開発のバリエーションも増えてきている印象である。
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