“名刺サイズスパコン”「Parallella Board」を作った男の話:人生最悪の時を乗り越えて(4/4 ページ)
“名刺サイズスパコン”こと「Parallella Board」のテクニカルカンファレンスが開催され、開発者のアンドレアス・オロフソン氏が来日した。5時間にも及んだ濃厚なイベントを紹介する。
クラウドコンピューティングなど新たな取り組みも続々
オロフソン氏は現在の取り組みとして、「supercomputer.io」を紹介してくれた。これはコンピュータがアクティブではない状態を利用して、余剰リソースをクラウドへつなぎ、並列処理させるプロジェクトだ。スーパーコンピュータとはまだ言えないものの、作成したプログラムを配布して、並列処理を行わせている。こうした取り組みが、何千、何万と増えることで、より大きな取り組みができるようになるだろう。
そしてもう1つ紹介されたのが、先ほども取り上げたSDRについてだ。Analog Devicesの「FCOMMS2」というボードと組み合わせ、12ビットのDACとADCに加えて、70MHzから6GHzまでの電波帯を受信できる。これらについては後日、発売されるとのこと。「ホビー用途としてはとても面白い」(オロフソン氏)。
オロフソン氏の取り組みは他にもある。Porcupineを通じてRaspberry Pi対応カメラモジュールを動作させる取り組みや(まだカメラは動いておらず、最初に動作させた人には1000ドルが提供されるそうだ)、PAL(Parallella Architecture Library)への関数追加などにも着手している。PALへの関数追加については、追加してくれた人にPalallella Boardが贈られるとのこと。「ただし作ってほしい関数にはリストがあって、その中のものを作ってほしい」(オロフソン氏)。
最後に紹介するのは画像認識。先に挙げたsupercompiter.ioを通じ、Parallella Boardを使って画像を認識させるというもので、入力された画像データは1万2000ものデータベースと比較され、適合する物とのマッチングが行われる。デモ段階ではParallella Board1枚当たり秒間280枚の処理速度となっているが、最適化による処理速度向上の余地があるそうだ。
カンファレンスも盛りだくさん、購入時の注意
カンファレンスでは、開発者であるオロフソン氏の講演の他にも、Parallella Community準備委員会の太田昌文氏から、実際にParallella Boardを買ってから導入するまでの注意点について紹介するセッションや、筑波大学の山際伸一氏によるEpiphanyを使った並列コンピューティングの解説、Parallella Boardを使ったオーディオ再生装置といった、ホビー要素の強い作品の紹介も行われた。
なお、Parallella Boardを購入する際には注意点が1つある。Parallella Boardは米国より軍事利用可能な民生品としての指定を受けており、商品在庫が英国であることから、英国輸出管理法の規制を受ける。そのため、購入時には利用者の氏名や用途などを確認するための申請が必要となる(詳細については、アールエスコンポーネンツのWebサイトを参照してほしい)
今回は合計で5時間にもわたる長丁場のカンファレンスであったが、これを機会にParallella Boardが日本でも普及し、並列コンピューティングが身近なものになることを祈りたい。
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