排気再循環技術で米国研究所が新提案、燃費向上効果は10%以上:人とくるまのテクノロジー展2015
米国の非営利独立研究所であるSouthwest Research Institute(SwRI)は、「人とくるまのテクノロジー展2015」の日本ナショナルインスツルメンツブースで、新開発の4気筒エンジン「D-EGR」を紹介。気筒1本分の排気をそのままEGR(排気再循環)に回すことで、EGR率は一般的なエンジンの10数%の約2倍に当たる25%を達成している。
日本ナショナルインスツルメンツ(日本NI)の「人とくるまのテクノロジー展2015」(2015年5月20〜22日、パシフィコ横浜)ブース内に出展していたのが、米国の非営利独立研究所であるSouthwest Research Institute(SwRI)だ。
SwRIは、テキサス州サンアントニオに本拠を置き、NASA(米国航空宇宙局)やEPA(米国環境保護庁)、CARB(カリフォルニア州大気資源局)など米国政府関連を中心に研究開発の依頼を数多く引き受けていることで知られる。自動車関連の研究開発も数多く手掛けており、日本の自動車メーカーやティア1サプライヤとの関係も深い。
そのSwRIが日本NIブースで紹介していたのが、新開発の4気筒エンジン「Deticated-EGR(D-EGR)」だ。
D-EGRでは、エンジンの4本の気筒のうち、1本の気筒について理論空燃比よりも燃料を多め(リッチ)にし、他の3本の気筒については、リッチにした気筒の分だけ理論空燃比よりも燃料を少なめ(リーン)にして燃焼を行う。
リッチな状態の気筒では、燃料燃焼後にCO(一酸化炭素)とH2(水素)が生成される。D-EGRでは、この気筒から排出されるCOとH2を含んだ排気を、EGR(排気再循環)システムを使ってエンジン気筒の上流に再循環する。
一般的なEGRシステムでは、エンジン気筒からの排気ガスを再循環できるEGR率は10数%程度といわれている。D-EGRの場合、4本ある気筒のうち1本分の排気ガスをEGRシステムに使用するのでEGR率は4分の1=25%である。このため、EGR率と連動するポンピング損失の低減効果を高められる。
またリッチな状態の気筒からの排気ガスに含まれるCOとH2は、燃焼を促進する効果があるので、熱損失を低減する効果も得られる。さらに、COとH2はオクタン価も高いので、ノッキングの発生を抑えやすくなり、圧縮比を高めてエンジンの熱効率の向上にもつなげられる。
SwRIは、General Motorsの中型セダン「ビュイック・リーガル」について、排気量2.4l(リットル)の直列4気筒自然吸気エンジンを、D-EGRを適用した排気量2.0lのターボエンジンに置き換えた場合の効果検証を実施。その結果、燃費は、市街地モードで24.5mpg(マイル/ガロン)から27.7mpgと約13%向上した。高速道路モードについても、43.6mpgから47.6mpgと約9%向上している。
このようにD-EGRには燃費向上に大きな効果がある。ただし、原理的に見て欠点になり得るのが、エンジンの4本の気筒における空燃比のアンバランスによって発生する可能性のある振動である。「しかし、ビュイック・リーガルによる効果検証では、実用的に振動による問題が発生することはなかった」(SwRIの説明員)。このため、欧州の自動車メーカーがD-EGRの採用に動いており、日本の自動車メーカーも興味を持ち始めているという。
なお、D-EGRの開発や、ビュイック・リーガルにおける効果検証の制御システムに利用されたのが、National Instrumentsの計測ハードウェア「CompactRIO」やグラフィカルシステム開発環境「LabVIEW」である。
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