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インダストリー4.0がいよいよ具体化、ドイツで「実践戦略」が公開インダストリー4.0(5/6 ページ)

注目を集めるドイツのモノづくり革新プロジェクト「インダストリー4.0」。この取り組みを具体化する「実践戦略」が2015年4月に示された。同プロジェクトに参画するドイツBeckhoff Automationグループに所属する筆者が解説する。

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「つながる化」で広がるFAオープン化

 この「インダストリー4.0コンポーネント」が普及すると仮定した場合、これが端的に意味するのは生産財としてのFAコンポーネントのオープン化だ。

 工場を構成する生産財は物理的な包含関係になっている。部品が集まって装置となり、装置が並んで設備となり、設備が並んで工場となる、といった具合だ。それぞれの層に部品メーカー、装置メーカー、設備メーカーなどがひしめき合っており、それぞれ前者は後者のサプライヤで後者は前者のユーザーとなっているのが製造業における産業構造の一端である。この構造ゆえ文字通り顧客を「囲い込むこと」が競合優位を高める原則だ。しかし、物理的な包含関係を維持していても、これらが等価で交換可能な「インダストリー4.0コンポーネント」として包含関係が論理的に解けて図4のように自在につながるようになると、ビジネスの競争原理に変化が生ずる。

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図7:オープン化の流れはサプライヤの立場でもユーザーの立場でもビジネスルールの変化につながる(クリックで拡大)※出典:ベッコフ

 生産財のサプライヤの立場では、インダストリー4.0対応にするための「管理シェル」を実装することで売り先が新たに創出され、市場拡大につながる。その一方で競合も増えるため当然競争も激しくなる。自由競争に勝ち残る純粋な競争力が問われるようになるわけだ。

 ユーザーの立場では、「管理シェル」を活用すれば単純に便利になるだけでなく、購入先の選択肢が増加するため、機能・性能・品質の向上やコスト削減、安定調達につなげる事が可能になる。その一方でどの選択肢を組み合わせることが最も付加価値が高いかを選別する自己責任が発生するため、その組み合わせのノウハウを競争力や差別化の源泉とする必要が出てくる。

オープン戦略、クローズ戦略

 こうした競争原理の変化をオープンイノベーションの挑戦と捉えた場合、かなり乱暴な抽象化ではあるが、競合優位性への影響を事業規模と事業戦略の違いで整理することができる。ここでの「オープン戦略」とはオープンな規格を積極的に採用したり提案したりすることで自由競争を突き進む「攻めの経営」で、「クローズ戦略」とは独自規格や囲い込みで競合優位を作り出す「守りの経営」だ。

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図8:事業規模と事業戦略の違いによるオープンプラットフォームでの競合優位性の変化(クリックで拡大)※出典ベッコフ

 図8において、(1)は攻めの経営で既に市場を取っているため死角が少ない。(2)は市場のオープン化で新たな成長のチャンスを得る企業が出てくる。競争原理の潮目の変化点では小回りの効く小規模事業の方が有利なのはビジネスの定説だ。(3)はジリ貧だが、事業規模が小さく小回りが利くため戦略の思い切った転換が可能な場合がある。(4)は既存顧客や自己の否定につながる戦略転換は難しいため、シェアを落とす企業が出てくる可能性があるが(2)にいる企業との提携戦略・買収戦略が効果を発揮することがある。

 もちろん、これは単純にオープン戦略が正解でクローズ戦略が間違いという話ではない。携帯電話端末の例で言うと、オープンなAndroid端末はシェアが高くて売上高が大きくても利益を出すのは楽ではないし、クローズなガラケーは大きな成長は見込めないものの、アップル一社で業界の利益を総取りしているiOS端末は典型的なクローズ戦略だ。

 ただ、確実にいえるのは競争の舞台がある意味で「スターウォーズ化」するということだ。オープン戦略の(2)に属す利害の一致する多くの企業が「連合軍」として、クローズ戦略で勝ち抜くトップの一社である「帝国軍」(4)と闘い(1)を目指す構図となることは避けられない。映画ではジェダイの活躍により「連合軍」が勝利することになっているが、製造業では果たしてどうなるか。

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