インダストリー4.0がいよいよ具体化、ドイツで「実践戦略」が公開:インダストリー4.0(4/6 ページ)
注目を集めるドイツのモノづくり革新プロジェクト「インダストリー4.0」。この取り組みを具体化する「実践戦略」が2015年4月に示された。同プロジェクトに参画するドイツBeckhoff Automationグループに所属する筆者が解説する。
基幹系と制御系の連結をどうするか
ところで「実践戦略」で注目すべきなのは、基幹系ネットワーク(1)と制御系ネットワーク(2)の接点(3)を巧みに設計しているところである。
新たに規定する「インダストリー4.0規格」に準拠した通信規格(図中緑色の線)はリアルタイム性が不要なので物理層としては既設のEthernetで十分だ。しかし、既存の制御系ネットワーク(図中灰色の線)はリアルタイム性が必要であり、物理層がEthernetとなっていないものすらたくさん存在する。インダストリー4.0対応を進めるにあたり新規格のネットワークの新設を前提にしてしまうと普及が進まないため、(1)と(2)はあえて論理的にまとめるに留め、(3)が物理的に複数並立することを否定しない仕組みとなっている。
これは「ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【後編】」で紹介した通り、制御系のネットワーク規格が乱立している状況があるためだ。無理に統一しないのは制御系の「インダストリー4.0規格」へのマイグレーションのために現実的な方策である。その一方で、主要な産業用Ethernet規格は、複数の異なる通信規格を(3)で物理的に単一のEthernetケーブルにカプセル化してまとめることが可能なので、長期的には工場内ネットワークインフラの産業用Ethernetへの移行に伴い、省配線システムが浸透していくだろう。
日本における「インダストリー4.0コンポーネント」
「インダストリー4.0コンポーネント」は、それぞれが「オブジェクト」なので、これを複数内包するコンポーネントを定義することも当然可能である。装置を基幹系システムに単一の「オブジェクト」として見せたい場合も、装置を構成する部品単位で見せたい場合も、アプリケーションの要件に応じて柔軟に対応できるのはまさにオブジェクト指向型アーキテクチャのメリットだ。
ところで、筆者がこの図を見て真っ先に感じたのは「ORiNアーキテクチャ」と酷似していることである(参考画像)。ORiNとはOpen Resource interface for the Networkの略で、ORiN協議会により制定された工場情報システムのための日本発の標準ミドルウェア仕様である(関連記事:いまさら聞けない ORiN入門)。
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