ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【後編】:インダストリー4.0(2/6 ページ)
ドイツ政府が主導するモノづくりの戦略的プロジェクト「インダストリー4.0」について解説する本連載。今回は「インダストリー4.0」の課題やドイツ政府が狙う核心に迫るとともに、日本のモノづくりがどの方向に進むべきかという提言を行う。
ドイツ勢が存在感を示す「産業用イーサネット」
「産業用イーサネット」には数多くの種類があり、機能や性能がそれぞれ異なるため、それらを一概に比較することは難しい。また、普及状況も調査機関によって市場調査結果が異なるため、その実態を把握しにくい。ただ、それぞれの名称が検索エンジンで検索された回数や検索元の分布を比較してみると興味深い意味合いを読み取れる。ある期間の全検索数に対し特定キーワードの検索回数の比を正規化して時系列に並べた「Google Trends」を利用するのである。
必ずしも普及率やシェアを直接反映するわけではないが、関心が寄せられているキーワードは検索されることが多い。Google Trendsが信頼性のおけるデータだと仮定すれば、この比較は「産業用イーサネット」に関わる人々の「マインドシェア」を示す一定の指標になると見てよいだろう。Googleはこれを「人気度」と表現しているため、本稿でも以降「人気」と表現する。
産業用イーサネットのGoogle Trendsによる人気度の比較。グローバルではドイツ生まれのPROFINETとEtherCATの人気が高く、その他との差が顕著だ(CC-LinkとMECHATROLINKは漏れがないように新しい産業用イーサネット規格「CC-Link IE」や「MECHATROLINK-III」に加えて既存フィールドバス規格である「CC-Link」や「MECHATROLINK」などの検索キーワードも「OR」で検索対象として含めている)(参照元:http://goo.gl/5OE6R3)(クリックで拡大)
一番人気はドイツのシーメンスが開発元である「PROFINET」だ。前身のフィールドバスである「PROFIBUS」の圧倒的なシェアを反映して高い人気を誇っている。2番手は筆者が所属するドイツ ベッコフが開発元である「EtherCAT」。2003年に発表されてから10年以上も経た規格だが、現在も通信スピードが速い産業用ネットワークとして認知されている(関連記事:いまさら聞けない EtherCAT入門)。3番手が米国のロックウェルオートメーションが開発した「EtherNet/IP」。続いて三菱電機の「CC-Link」や安川電機の「MECHATROLINK」が続く結果となっている。世の中には他にも多数の産業用イーサネットやフィールドバス規格があるので、興味があればキーワードを変更して比較してみるといいだろう。
ところで、Google Trendsにはさまざまな角度からデータを分析できる機能がある。フィルター機能を使って日本国内からの検索結果のみを分析することや、それぞれのキーワードの検索元の地域を分析することが可能だ。これらの機能を利用して、産業用イーサネットの傾向をもう少し掘り下げて見てみよう。
このように検索エンジンを使った簡単な比較をしただけでも、世界中で互換性のないネットワークが多数混在しており、工場現場の機器は接続性に課題があることが想像できるだろう。これは日本に限らず全世界共通の課題であるためインダストリー4.0を推進するドイツとしても頭痛の種である。さらに、産業機器はライフサイクルが10年以上と長く、既にインストールされている数も膨大なものがある。メーカー間の利益相反にも直結するため、政策的に「規格統一」するのも難しい。結局、市場原理による自然淘汰的な「規格統一」を待つしか方法がないわけだ。
インダストリー4.0におけるフィールドバスレベルの通信標準化は、この原則に従い、IEC 61158の動向として見守っている状況だ(参考:ドイツの標準化戦略(German Standardization Strategy)(PDF))。
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