燃料電池バスにSiCダイオードを採用、燃費向上効果は0.5%を想定:人とくるまのテクノロジー展2015
トヨタ自動車は、「人とくるまのテクノロジー展2015」において、電動システムにSiC(シリコンカーバイド)デバイスを搭載した車両による実証実験の概要を紹介した。
トヨタ自動車は、「人とくるまのテクノロジー展2015」(2015年5月20〜22日、パシフィコ横浜)において、電動システムにSiC(シリコンカーバイド)デバイスを搭載した車両による実証実験の概要を紹介した。
同社は2種類のSiCデバイス搭載車両を使って実証実験を進めている。1つは、パワーコントロールユニット(PCU)内の昇圧コンバータとモーター制御用インバータに、SiCトランジスタとSiCダイオードから成るSiCパワーモジュールを搭載した「カムリ」だ。このカムリを用いた実証実験は2015年2月から約1年間、豊田市を中心に実施する計画である。
現時点では、従来のSi(シリコン)-IGBTとSiダイオードを用いる現行のカムリと比べて、燃費向上率は1〜5%の間に留まっているという。「2014年5月の発表では『プリウス』ベースの車両の実証実験で燃費向上効果が5%以上あったが、より車格の大きいカムリでは5%を下回っている。1年間の実証実験を経てから、現時点では行っていない高周波化などに取り組んで、最終的な目標である10%の燃費向上率を達成したい」(同社の説明員)という。
もう1つの実験車両は、燃料電池車「ミライ」と同じ燃料電池システムを搭載する燃料電池バス「トヨタ FC BUS(FCバス)」だ。FCバスでは、燃料電池セルスタックの電圧を制御するFC昇圧コンバータにSiCダイオードを採用している。
FCバスは、2015年1月から豊田市内の路線バス「とよたおいでんバス豊田東環状線」を営業運行しており、その走行結果から燃費向上率を算出する。「FCバスのSiCダイオード採用による燃費向上率は0.5%程度を想定している」(同説明員)。
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