フルSiCのPCUを「カムリ」に載せて実証実験、新型燃料電池バスにも搭載していた:エコカー技術
トヨタ自動車は、次世代パワー半導体であるSiC(シリコンカーバイド)デバイスを採用したパワーコントロールユニット(PCU)を搭載するハイブリッド車「カムリ」の試作車を開発。2015年2月から約1年間公道での実証試験を行う。また、同年1月から豊田市で運行している新型燃料電池バスにも、SiCデバイスを採用していることを明らかにした。
トヨタ自動車は2015年1月29日、次世代パワー半導体であるSiC(シリコンカーバイド)デバイスを採用したパワーコントロールユニット(PCU)を搭載するハイブリッド車「カムリ」の試作車を開発したと発表した。同試作車を使って、2015年2月初旬から約1年間、豊田市を中心に公道での走行試験を行う計画。
PCUには、二次電池パックの電圧を昇圧するコンバータや、走行用モーターを制御するインバータといった電力変換回路が内蔵されている。現在、これら電力変換回路のパワー半導体にはSi(シリコン)デバイスが用いられているが、電力変換時の損失は車両全体の電力損失の約20%を占める。SiCデバイスは、電流を流すときの抵抗が小さく、Siデバイスよりも電力変換の損失も抑えられることから、電動システムを搭載する車両の燃費向上に寄与するといわれている。
今回開発したカムリの試作車は、PCU内の昇圧コンバータとモーター制御用インバータのSiデバイスをSiCデバイスに置き換えている。電力変換回路では、トランジスタとダイオードがセットで用いられることが多く、SiCデバイスの採用事例や実証実験ではダイオードだけをSiCデバイスに置き換えることも多い。カムリの試作車のPCUは、ダイオードだけでなくトランジスタにもSiCデバイスを用いた、いわゆる“フルSiC”になっている。
公道走行試験では、走行速度や走行パターン(高速走行、市街地走行、渋滞など)、外気温などさまざまな走行条件ごとに、PCU内の電流、電圧などのデータを取得し、現状のSiデバイスとの比較による、SiCデバイスの燃費向上効果を検証するという。
「TOYOTA」ロゴの横にあったマークの意味が判明
トヨタ自動車は2015年1月8日、燃料電池車「ミライ」と同じ燃料電池システムを搭載する燃料電池バス「トヨタ FC BUS(FCバス)」を発表した。FCバスは、同年1月9日から豊田市内の路線バスでの運用を始めている。
このFCバスの外観写真を見ると、車両の屋根部の「TOYOTA」ロゴの横に「SiC」というマークが入っているのが分かる。実はFCバスの燃料電池システムのうち、燃料電池スタックの電圧を昇圧するコンバータにSiCダイオードを採用している。「SiC」マークはこの事実を示していた。
ダイオードのみをSiCデバイスに変更する場合は、“ハイブリッドSiC”と呼ばれることが多い。このハイブリッドSiCの昇圧コンバータについては、3月末までのFCバスの営業運行期間に走行データを取得し、燃費向上効果を検証することになる。
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