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インダストリー4.0に対し日本企業が取り組むべきことハノーバーメッセ2015 リポート(後編)(2/3 ページ)

ハノーバーメッセ2015のメインテーマとなった「インダストリー4.0」だが、本連載では、現地での取材を通じて、インダストリー4.0に関する動きを3回にわたってお伝えしている。後編の今回は、ドイツのインダストリー4.0に対し、日本企業が取り組むべきことについて考えてみたい。

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“インダストリー4.0”と“インダストリー4.0のようなもの”

 ドイツ連邦政府が主導する国家プロジェクトである「インダストリー4.0」と、「インダストリー4.0が目指すモノづくりの将来像」を区別して考えた場合、日本の製造業は、「インダストリー4.0が目指すモノづくりの将来像」に対しては既に同様の方向性での取り組みを進めているところだといえる(関連記事:ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】)。

 品質の向上や柔軟な生産体制の構築は、製造業各社がもともと目指してきたものであり、三菱電機のe-F@ctoryなど情報連携を進めるソリューションもさまざまなモノが出てきている。インダストリー4.0が指し示すような、上流の経営基幹系のシステムから、現場のシステムまで結び“一元的な管理で自律的に動く”というような領域まではまだ遠いとはいえ「4.0」に向けた「3.3」や「3.4」程度には歩みを進めた状態だといえる。

 実際に大手の製造業および生産財関連企業などに話を聞くと「既にインダストリー4.0の目指す方向性とは同じ取り組みができている」という人も多い。ただ、このインダストリー4.0のビジョン完成を目指す中で、日本企業にとっては“この先”こそが課題だといえる。

 現在、インダストリー4.0のようなコンセプトで、日本企業が取り組むモノの多くは自社の工場内だけ、自社製品だけ、自社製品のプラットフォームだけ、など製品や機器、システムなどにひも付けされた一定領域だけで“つながる”というものだ。しかし、その領域外と“つなげる”ことを考えた場合、他社との協業や標準化などを進めなければ難しくなる。製造業が同分野に数多く存在し、競合による利害関係が発生する日本においては、これらの状況を乗り越えて“つながる”ことへのハードルが高いのだ。

 実際に、経済産業省でも、製造業や生産財企業などにヒアリングを行ったとしているが、各企業の利害関係の調整については難しいとしている。また、これらの調整が難しいために「日本主導の標準化」についても、新たに日本発で打ち出すことは難しいのではないかといわれている。そういう意味では、インダストリー4.0が目指す世界を実現するには、自社で個々に協業を行い「一品モノ」の生産システムを作り上げるか、どこかで標準化が進むのを待つしかない。

重視される標準化への動き

 ドイツの国策である「インダストリー4.0」は、これらの日本企業が苦しむ「標準化」を主要テーマの1つとしたプロジェクトである。現状ではドイツに現地法人を持つ企業であることが求められたり、さまざまな資料がドイツ語でしか用意されていなかったりするなど、閉鎖的な状況ではあるが、インダストリー4.0プロジェクトにおける技術イニシアチブ「スマートファクトリーKL」の会長を務めるデトレフ・チュールケ氏は「インダストリー4.0というビジョンはドイツの発明だが、われわれはこのビジョンやコンセプトを世界に広げたいと考えている。生産に関するパラダイムを変えたいというのが狙いだ」と述べており、徐々にドイツ以外の企業も含めて規格化を進めていく姿勢を示している(関連記事:ドイツ製造業の危機感が生んだインダストリー4.0、日本はどうすべきか?)。

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