パーキンソン病の発症に関わる遺伝子変異メダカの作製に成功:医療技術ニュース
京都大学は、パーキンソン病の発症に関わる遺伝子変異メダカを作製・解析することで、パーキンソン病の発症メカニズムの一端を解明した。GBA遺伝子の変異がパーキンソン病発症の最も強い危険因子であることから、GBA欠失メダカを作製した。
京都大学は2015年4月9日、パーキンソン病の発症に関わる遺伝子変異メダカを作製・解析することで、パーキンソン病の発症メカニズムの一端を解明したと発表した。同大医学研究科の高橋良輔教授らの研究グループが、同大医学研究科の武田俊一教授、農学研究科の木下政人助教、大阪大学医学研究科の藤堂剛教授、順天堂大学医学研究科の内山安男教授らの研究グループと共同で行ったもので、同月2日(米国東部時間)に米科学誌「PLOS Genetics」で公開された。
パーキンソン病は、主に50歳以上で発症し、徐々に運動機能障害が進行する原因不明の神経変性疾患。日本には約15万人の患者がいるとされるが、病気そのものの進行を抑える治療法はいまだ見つかっていないという。
同研究グループでは、ゴーシェ病の原因遺伝子とされるGBAの変異に着目。GBAの変異は、日本人のパーキンソン病患者の約1割に見られるとされ、パーキンソン病発症の最も強い危険因子と考えられている。
同研究では、飼育や遺伝子改変が容易なメダカを用いて、GBA遺伝子の変異メダカを作製した。病気のモデル動物として使われるマウスでは、GBA遺伝子変異により致死的となって解析が困難であるのに対し、GBA遺伝子変異メダカは月単位で生存し、病態の進行を観察できた。
さらに、GBA遺伝子変異メダカの脳を詳細に調べたところ、パーキンソン病患者で特徴的に見られるαシヌクレインの蓄積が認められたという。また、この変異メダカの神経細胞では、細胞内の不要な物質の除去システムであるオートファジー・ライソソーム系が機能不全を起こしており、αシヌクレインの蓄積はこれが原因であることが示唆された。
同研究成果から、GBA欠失メダカは、パーキンソン病およびゴーシェ病の研究に有用な新規モデルと考えられるという。今後は、同変異体への薬剤投与による病態の変化や、他遺伝子変異体との交配・表現型解析により、パーキンソン病・ゴーシェ病のさらなる病態解明や新規治療法開発への利用が期待されるとしている。
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