膜輸送バランスが抗真菌薬の活性発現に重要であることを解明:医療技術ニュース
京都大学の研究グループが、細胞膜ステロールを標的にする抗真菌薬の作用には、細胞膜を構成する成分の膜輸送のバランスが重要であることを明らかにした。
京都大学は2014年12月12日、同大薬学研究科の掛谷秀昭教授らの研究グループと理化学研究所の吉田稔主任研究員らの研究グループが、細胞膜ステロールを標的にする抗真菌薬の作用には、細胞膜を構成する成分の膜輸送のバランスが重要であることを解明したと発表した。
細胞膜は、多くの抗生物質や細菌毒素が結合して薬理活性を発揮するが、脂質・タンパク質・糖鎖などの複雑な相互作用の上に成り立っており、その解析は困難で、抗真菌薬の作用メカニズムも正確に理解されていなかった。
同研究では、マニュマイシンAという微生物由来の化合物が抗真菌薬の作用を阻害することから、細胞膜の輸送バランスが抗真菌薬の作用に重要であることを検証。ケミカルゲノミクス的解析と生化学的実験などにより、マニュマイシンAが細胞膜や細胞外にタンパク質などの物質を運ぶ輸送(エキソサイトーシス)を低濃度で抑えることを明らかにした。その一方で、細胞膜や細胞外の物質を取り込む輸送(エンドサイトーシス)には、高濃度でも穏やかな阻害しか示さなかったという。
これにより同研究グループでは、抗生物質の標的となる細胞膜ステロールはエキソサイトーシスによって細胞膜へ運ばれ、エンドサイトーシスによって細胞膜から取り込まれるという「膜輸送バランスモデル」を提案。細胞膜の輸送バランスが、抗真菌薬の作用に重要であることを明らかにした。
今後は、膜輸送のバランスを調節することで、抗真菌薬の作用を制御する新しい治療法の開発や、人工細胞の設計への応用なども期待されるという。
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