トヨタ中国攻略の切り札、ハイブリッド車は「新エネルギー車」になれるのか:上海モーターショー2015 リポート(3/4 ページ)
フォルクスワーゲンやGMといったライバルに対して、中国市場での出遅れ感が否めないトヨタ自動車。巻き返しの切り札として期待しているのが、中国現地で開発から生産までを一貫して行ったハイブリッド車だ。都市部での購入が促進されている電気自動車などと同じ「新エネルギー車」として認められれば、同社の反転攻勢のきっかけになるかもしれない。
都市部から進む排気ガス規制と新エネルギー車のインセンティブ
中国では急速な経済成長に伴って、環境汚染が深刻化している。その対策として、2010年以降、電気自動車に代表される新エネ車の購入推進と、排気ガス規制の強化が進められてきた。中国でも一級都市に分類される北京や上海は、他の都市に先んじて排気ガス規制が進めていることもあって、現在までに電気自動車やプラグインハイブリッド車、燃料電池車に対するインセンティブを行っている。
もともと、新エネ車に関しては電気自動車で最高6万元、プラグインハイブリッド車で最高5万元の購入補助金が設定されていたが、2014年9月から10%の購入税も免税になった。この他、例えば上海では、新エネ車ではない従来型の内燃機関車を購入して運転するのに必要なナンバープレートの交付数で総量規制を行っている。新たに交付を受けようとすると、入札方式で時には10万元もの高値になることもある。しかし、新エネ車については、ナンバープレートを無料で手に入れられるのだ。
中国における排気ガス規制は、北京が先んじて導入したものを全国に普及する方針で進められてきた。まずは、欧州で1996年に施行された「EURO(ユーロ)2」に準じる「国2」という規制が導入された。現在、一級都市では、欧州で2009年に施行された「ユーロ5」相当の「国5」が導入されている。次なる「京6」の導入に関しては、2016年からの導入が決まっているが、規制内容は未定の部分も多い。この詳細は別の機会に譲ることにして、話を元に戻そう。トヨタ自動車の大西氏は、以下のように語る。
「現在の政権下では、インセンティブのみならず、省庁横断で『EV100人会』なる組織が発起されて電気自動車の推進が進められています。もちろんトヨタ自動車も参加しています。南京のように電気自動車に補助金を設定したモデル都市ができるなど、充電インフラも含めて急速に整備されていくでしょう。世界的にみても、Tesla Motors(テスラ)の『モデルS』やBMWの『i3』、『i8』といった、従来のコミュータータイプを越える電気自動車も登場しています。中国だけではなく、グローバルで電気自動車が新たな時代に入りつつあると感じています。トヨタとしては、電気自動車についてもできるだけ幅広いお客さまに買っていただきたいという基本思想にのっとって、まずは小型の電気自動車を世に出して行きたいと考えています」(大西氏)
トヨタ自動車としては、電気自動車の普及を目指す舞台として、中国は適した市場の1つと考えているようだ。とはいえ、内燃機関車と比べると、同社の知見がまだ十分に得られていない分野だけに、電気自動車の発売に当たっては、メンテナンスも含めてしっかりとフォローできる一部の顧客に手渡して十分に検証した後で、一般に広く販売する方針である。
また燃料電池車の「MIRAI」は、製品としては完成度の高いものができたとしつつも、インフラ側の整備が普及に関する鍵になることは否めない。日本でも行っているように、中国でも限定された地域での実証実験からスタートして、中国国内における燃料電池車や水素インフラに対するコンセンサスを得ていくことが重要だとしている。
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