ロボットに使われる分散処理、なぜ「ROS」が好まれるのか:ROS(Robot Operating System)概論(2)(3/3 ページ)
ロボットの制御には集中管理よりも分散処理の方が都合が良く、さまざまなものが登場しているが、その中で一番有名なのが「ROS(Robot Operating System)」である。ではなぜROSが有名なのか。
ROSがなぜ好まれるのか
ROSはもともと、SAIL(Stanford Artificial Intelligence Laboratory:スタンフォード人工知能研究所)が「STAIR(STanford AI Robot)」というロボットを生み出す際に開発されたものである。
このSTAIRの開発にはWillow Garageという会社が協力しており、これもあってROSの開発は同社が主体になっていた模様だ。そのROSであるが、同社は2012年にOSRF(Open Source Robotics Foundation)を設立し、2013年2月にはROSの管理をこのOSRFに移管。以後はこのOSRFがOpen Sourceの形でROSの開発とメンテナンスに当たっているいる。
このROSそのものは基本的にUbuntuの上で動作する。対応するハードウェアは非常に多く(一覧はwikiを見てもらうのが早い)、これ以外にも、自分で作成したロボットをROSで制御するというケースは非常に多い。なぜなら、ROSの特徴の1つは、この上で動くソフトウェアライブラリの多さだからだ。対応するライブラリ一覧はこちらから見られるが、現時点での最新版であるIndigo Igrooに対応したものだけでこれだけの数がある。
ROSそのものも順次更新されており、2010年1月に初公開されたROS 1.0以降、Box Turtle、C Turtle、Diamondback、Electric Emys、Fuerte、Groovy Galapagos、Hydro Medusa、Indigo Iglooとディストリビューションのアップデートが行われており、2015年5月には次のディストリビューションである「Jade Turtle」が予定されているという具合だ。
オープンソースということで広く利用され、しかも現時点でも多くの開発者が携わっていることもあり、一番勢いがあるロボット制御ソフトウェアと考えて良いだろう。単にソフトウェアライブラリのみならず、シミュレータやモデリングツールなどさまざまなツールがROSに対応しており、こうした部分も好まれている。
次回はもう少しこのROSの中身をご紹介したいと思う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ROS(Robot Operating System)概論(1):ロボット開発で注目される「ROS」(Robot Operating System)とは何か
ロボットの話題を聞くことが増えたが、判断と制御、駆動を備えたロボットを作るのはかなり骨が折れる。その負担を軽減するフレームワークが「ROS」(Robot Operating System)だ。 - ロボットにモデルベース開発の手法を、MATLAB/Simulink「Release2015a」
モデルベース開発環境「MATLAB/Simulink」の最新バージョン「Release2015a」が発表された。ロボット開発やFPGA/ASIC向け画像処理、アンテナ設計に適したツールボックスが追加されたほか、テスト管理ツールも導入され、使い勝手が向上した。 - Pepperで始めるロボットプログラミング(3):Pepperの音声認識を使ってクイズアプリを作る
Pepperには音声認識機能が搭載されており、GUIで簡単に「音声に反応するロボット」をプログラミングできる。プログラミングに有効な「ボックス」の使い方も覚えよう。 - イーソル、「OpenRTM-aist」と「ROS」のフレームワーク連携を参考展示
西日本唯一の組み込みシステム技術専門展示会「Embedded Technology West(ETWest)2014」が、グランフロント大阪(大阪府大阪市)で2014年7月29、30の両日に開催された。イーソルは、ロボット開発用のミドルウェア「OpenRTM-aist」と「ROS(robot operating system)」を連携させるデモ(参考展示)を行っていた。 - ソフトバンクのロボット事業、本命は「Pepper」ではなく「V-Sido OS」か!?
先日のソフトバンクの発表に続き、同グループ会社のアスラテックが「新規ロボット事業」に関する記者説明会を開催。ロボット制御ソフトウェア「V-Sido OS」を主軸とする同社の戦略・展望を、当日の発表内容とチーフロボットクリエーターである吉崎航氏のコメントを交えて紹介する。