西陣織の技術を用いた12誘導心電計測布を開発:医療機器ニュース
京都大学は、西陣織の技術を用いて、12誘導心電計測に必要な電極を配置した帯状の布を開発した。正中線と脇の下の2つの目印に合わせて胸の周りに巻くだけで、12誘導心電図の計測に必要な電極を簡単に正しく取り付けることができる。
京都大学は2015年4月10日、西陣織の技術を用いた12誘導心電計測布を開発したと発表した。同大医学部附属病院の黒田知宏教授と、京都高度技術研究所(ASTEM)、帝人グループの帝健と共同で開発された。
心臓疾患の1つである急性虚血性疾患は、発症後2時間以内にバルーン療法(PCI)措置を行わなければ、大幅に救命率が下がる。そのため、救急搬送前に12誘導心電図という心電計測により、虚血性心疾患であるかを把握する必要がある。しかし、精密な12誘導心電図は、電極10個を正しい位置に取り付ける必要があるため、救急現場に普及していなかった。
同研究では、12誘導心電計測に必要な10個の電極のうち、8個を配置した帯状の布を開発した。正中線と脇の下の2つの目印に合わせて胸の周りにぐるっと巻くだけで、12誘導心電図の計測に必要な電極を簡単に正しく取り付けることができる。
今回開発された布は、西陣織の技術を用いて作製。西陣織は、複雑な模様の電気回路を1本のつながった糸で織り出せるため、心電などの生体電気信号の計測に適したEテキスタイル(電気回路の入った布)を工業的に生産することが可能だという。そのため、高品質な心電計測布を、安く安定して製造できる。
帝人グループでは、この成果を受けて、年内にも救急用12誘導心電布を商品化する予定だ。
*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***
関連記事
- CFRPの知財マップ/炭素繊維で世界シェア7割を占める日本企業の知財勢力図は?
炭素繊維強化樹脂(CFRP)の原料として注目を集める炭素繊維(CF)。その世界市場の7割を日本のメーカーが握っている。CFRPとCFの知財動向をチェックする。 - CFRPリサイクル技術の進展、そして次への展開を推察する!
CFRP素材普及の最大のネックともいえるリサイクル技術ではどの企業が優位? 航空・宇宙、自動車の次に各社が狙う市場も調査。 - 京大発、未来型ビークル「Permoveh」――全方向駆動車輪で真横も斜めも回転も自在!!
京都大学大学院 工学研究科の小森雅晴准教授は、全方向駆動車輪を搭載した未来型の乗り物「Permoveh(Personal Mobile Vehicle)」を開発。前後・左右・斜め・回転が可能で、周囲の人と調和して移動できるパーソナルモビリティとしての利用に期待を寄せる。 - SiC-MOSFETの課題克服へ、新材料を用いたゲート絶縁膜で信頼性を向上
SiC-MOSFETの量産採用に向けた課題の1つとして挙げられているのが、酸化シリコンを用いたゲート絶縁膜に起因する動作時の信頼性の低さだ。大阪大学と京都大学、ローム、東京エレクトロンは、AlON(アルミニウム酸窒化物)を用いたゲート絶縁膜によって、SiC-MOSFETの信頼性を高める技術を開発した。 - 膜輸送バランスが抗真菌薬の活性発現に重要であることを解明
京都大学の研究グループが、細胞膜ステロールを標的にする抗真菌薬の作用には、細胞膜を構成する成分の膜輸送のバランスが重要であることを明らかにした。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.