「ハンバーガー」が設計の「禁じ手」?:甚さんの「サクッと! 設計審査ドリル」(12)(3/4 ページ)
いよいよ最終回。共締め、つまりエリカちゃんの言っていた「ハンバーガー」状態がダメな理由とは?
気を取り直して、解説
あー悪い悪い、脇道にそれちまった。そんじゃ設計審査をしてみようじゃねぇかい。まず、エリカちゃんの「電食の恐れで、さび発生。導通不良」の懸念点にはオイラも同意だぜぃ。
もう一度、先ほどの図1を見てみましょう。金属部品が7点も締結していたのでは、電食が起きないとは言い切れません。従って、7点の材質と電食の関係を前回のポテンシャル表で推定します。判断できないときに、表1における「設計検討」、そして、「設計検証」へと進みます。
設計検証って、実験や、僕が得意なCAEのことですね?
そうだ。そんじゃ、良君、2番目の懸念点を答えてみろ!
さっきもつい、低コスト化って言ってしまいましたが、えっと、「串1本で食材を留めている大きなハンバーガーみたいだなぁ」ということで、「すぐ、ぐずれちゃう、から、ダメ?」 多分……。
国木田さん! 「多分」じゃなくて大丈夫ですって! 迷ったら、「設計者を料理人、設計のアウトプットを料理そのもの」に置き換えて、きっぱり言えばいいんです!
エリカちゃんの言う通りだ。「多分」……じゃなくて、自信を持て。実は、電食よりも優先すべき懸念点がある。それは設計の「禁じ手」だぁ! 実は、このハンバーガー状態の設計も、その1つなんだが。
世の中のプロフェショナルや職人の間には数々の「禁じ手」が存在します。ちなみに「禁じ手」とはプロの世界では大変厳しい表現の単語です。例えば、以下です。
- サッカー:ドリブルをしている選手のユニフォームをつかみ、進行を妨げる
- 野球:投手が打者にわざとボールをぶつける
- 相撲:髪をつかむ
- ボクシング:倒れた相手を打つ
- マスコミ:罪を犯した未成年の実名や顔写真を掲載する
もちろん、設計の世界にも存在します。甚さんが言うように、「共締め」もその1つです。
設計には「一部品一機能」という職人のノウハウがある。あえて「ルール」とは言わないがよぉ、つまり「共締め」はこれに反するということになる。
「一部品一機能」……? 学校では教わらなかったなぁ……。
「一部品一機能」とは、甚さんが言うように公式や原理原則ではありません。設計職人のノウハウであり、目安であり、設計ワザです。
一方、詳細な解説ではありませんが、「甚さんの設計分析大特訓(2):灯油ポンプの設計審査をしようじゃねぇかい!」の3ページ目、表5、6、7では、「一部品一機能」の一歩上を行く設計職人のワザとして、「一部品二機能」に触れています。
まず、「一部品一機能」とは何か、説明するぞ!(表2)
表2の中に、何だか難しそうな言葉がありました。「1つの部品に対して1つの目的があり、その目的を達成するために、1つの手段、そして、1つのディメンションを有する。」……これは、一体どういうことですか? 「ディメンション」?
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