オープンソース解析ツール「OpenFOAM」、決してコストだけではないその評価:ベンダーに聞くCAE最新動向(1)(2/3 ページ)
CAEの最新動向を有力ベンダーに聞く短期連載。第1回は、オープンソースの流体解析ツール「OpenFOAM」を使った解析やサポートに10年以上の経験を持つCAEソリューションズに、その現状について聞いた。
吉野氏 当初のOpenFOAMには、グラフィカルユーザーインタフェースにしっかりしたものがなく、解析の際、ソルバーを選ぶのに手間がかかったのですが、(CAEソリューションズが提供する)英EngysのOpenFOAM向けGUI「HELYX」によって非常に使いやすいものになりました。HELYXでは、商用ツールと同じようにメニューから目的を選ぶと自動的にソルバーを選択してくれます。また、OpenFormのメッシングはsnappyHexMeshというヘキサメッシュ主体のメッシングですが、非常に素直なコードで書かれていて、きれいなメッシュが切れるよう、かなり改良が進んでいます。
MONOist OpenFOAMのユーザー数は? どのような業種で利用が進んでいるのでしょうか。
吉野氏 現在、世界に数万人のユーザーがいます。日本国内ではおそらく1000〜2000人がですが、本当の意味で流体解析の汎用コードとして使われているのは200〜300件ぐらいではないかと思います。流体解析の国内ビッグユーザーに関してOpenFOAMが普及しているかといえば、まだ過渡期でしょう。これは(主にサービス提供側の)人的リソースの問題で、24時間体制のサポートがまだできていないからです。ただ技術的に見れば、OpenFOAMを使って解析したり、大規模な並列計算をすることは皆さんが実証・検証されています。
利用のされ方ですが、決まった解析ワークフローをお持ちのユーザーで、メッシュからモデルを作って計算してプログラムに戻して、というような形ができている場合は、解析をOpenFOAMに置き換えるところまでいっていません。一方で、個別の研究テーマや一部の解析対象については問題なく使われています。そして先進的なユーザーでは、そこから設計プロセスの中に入り込む一歩手前の、これまで商用ツールで行っていたいろいろな計算をOpenFOAMに置き換えているところです。学術分野や自動車関係の研究会、欧州の自動車メーカー、重工メーカー、化学メーカーなどは、実用的に使っててさまざまな論文発表も行われています。数年前までは、商用ツールに比べて精度が悪いのではないかという話も出たのですが、この頃はそういう話も聞かれなくなりました。
MONOist 具体的なユーザー企業名は?
吉野氏 欧州の自動車メーカーでは、フォルクスワーゲン、アウディ、フェラーリ、ダイムラー、それから化学メーカーのBASFなどでかなり使われています。日本の自動車メーカー数社でも、研究開発部門などで利用されています。また、金属や鉄鋼、電気、重電といった企業のほとんどで使われています。
MONOist 研究開発部門で利用が進んでいるということですが、解析専任者ではない現場の設計者でも使えるものになっているでしょうか。
吉野氏 商用ベンダーの解析ツールを、そのまま設計者が使えるかといえば使えませんよね。それと同じ意味で難しいと思います。ただOpenFOAMなら設計者向けに、例えばあるターゲットの製品に対してパラメーターを振るだけで解析モデルと解析ができて、結果が出せるといったものが作れます。OpenFOAMはオープンソースで、かつオブジェクト指向に作られているため、部品化されたひとつひとつのモジュールを組み合わせて使いやすい専用のアプリケーションを作れるのです。
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