新たなエボラウイルスワクチンの開発に成功、霊長類で有効性を証明:医療技術ニュース
東京大学医科学研究所の河岡義裕教授らの研究グループは、新しいエボラウイルスワクチンを開発した。実験では、新ワクチンを接種したサルにエボラウイルスを接種しても感染しないことが明らかとされた。
東京大学は2015年3月27日、同大医科学研究所の河岡義裕教授らの研究グループが、新しいエボラウイルスワクチンを開発したと発表した。同研究は、東京大学、米ウイスコンシン大学、米国立衛生研究所(NIH)と共同で行われたもので、同ワクチンが霊長類に有効であることを示した。
世界保健機関(WHO)の報告によると、2015年3月15日時点でエボラ出血熱の感染者数は2万4000人以上、犠牲者数は1万194人に上る。その一方で、エボラウイルスに有効なワクチンはいまだ未開発で、新たなエボラウイルスワクチンの開発は重要課題となっているという。
同研究グループでは、安全性の高いエボラワクチン開発のため、エボラウイルスの増殖に必須の遺伝子VP30を欠損した変異エボラウイルス(以下、エボラΔVP30ウイルス)を人工的に作製した。エボラΔVP30ウイルスは、通常の細胞では増えず、特定の人工細胞でしか増殖できないため、安全だという。また、エボラウイルスを構成するほぼ全てのウイルスタンパク質を持つため、高いワクチン効果が期待できる。実験では、エボラΔVP30ウイルスをサルに接種し、致死量のエボラウイルスに感染させたところ、未接種のサルが全て死亡したのに対し、接種したサルは生き残ったという。
さらに同研究グループは、過酸化水素水を用いてエボラΔVP30ウイルスを不活化させた。これをサルに2回接種させたところ、その後、致死量のエボラウイルスを接種しても、感染しないことが明らかとなった。
同研究成果により、過酸化水素水で不活化したエボラΔVP30ウイルスは、安全性が高く、効果的な新規エボラワクチンとして有望であることが示された。今後は、早期実用化を目指し、人に接種できる安全性基準を満たしたワクチン製造や臨床試験などを進めていく予定だという。
なお同研究成果は、2015年3月26日(米国東部時間)に、米科学雑誌『Science』のオンライン速報で公開された。
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