まずは植物工場から――富士通とマイクロソフトが製造業向けIoTで協業:ハノーバーメッセ2015
富士通と米国マイクロソフトは、製造業分野におけるIoTを活用した技術展開において協業することを発表した。まずは富士通の会津若松の植物工場で実践を行う。
富士通と米国マイクロソフトは2015年4月12日(現地時間)、製造業分野におけるIoT(Internet of Things:モノのインターネット)を活用した技術展開において協業することを、ドイツで開催されているハノーバーメッセ(2015年4月13〜17日)で発表した。
マイクロソフトでは、産業用途に向けたMicrosoft Azureの活用を強化しており、適用範囲の拡大を進めてきている。一方で、富士通は「ものづくり革新隊」など自社の製造業としてのノウハウとICTの力を組み合わせて、製造業強化を進める取り組みを強化。2015年3月には新たにICTを活用した次世代モノづくりに向け自社のリファレンスを作り上げていく方針を示している(関連記事:「日本版インダストリー4.0」のハブに! 富士通が次世代モノづくり戦略を発表)。
これらの動きの中、富士通とマイクロソフトでは協業によりさらに、製造業向けのソリューションを強化していくことを決定。Windows 8.1 Proベースの富士通製デバイスや、Microsoft Azureを活用したクラウドサービス「FUJITSU Cloud A5 for Microsoft Azure」(以下、A5 for Microsoft Azure)のIoTサービス、および富士通のIoTプラットフォームなどを活用し、製造業におけるIoT活用に向けた技術開発と普及に取り組んでいく。
第一弾としてレタスを作る植物工場に導入
その第一弾として、富士通は、福島県会津若松市にある富士通グループの大規模植物工場「会津若松Akisaiやさい工場」で、自社が提供する「FUJITSU Sustainability Solution 環境経営ダッシュボード」(以下、環境経営ダッシュボード)、IoTプラットフォーム、A5 for Microsoft Azure、Windowsタブレットを活用し、管理者や技術者向けに製品品質の向上、システムの統合、機能性を向上させる検証を実施する。
具体的には、散在するさまざまなデータをA5 for Microsoft Azure上で分析・検証し、富士通の環境経営ダッシュボードで、製品品質、プロセス効率性、および設備の性能を同時に管理する。これにより、オペレーションの向上およびエネルギーコストの削減を目指す。
最初の実践工場として、低カリウムレタスを製造する植物工場を選んだ理由について富士通 統合商品戦略本部 ビッグデータイニシアティブセンター 環境ソリューショングループ シニアマネージャーの及川洋光氏は「会津若松のレタス工場はもともと半導体の工場であったのでさまざまなデータ取得が可能である点、レタスが生ものでありデータ活用の成果が生産性に直結する点などから、同工場が最初の実践拠点となった。富士通が取り組むレタスは低カリウムのものでもあるので、どういう数値が出ればカリウムを下げられるかという検証にもつながる」と話している(関連記事:レタスを作る半導体工場!? 植物工場は製造業を救う切り札になるのか)。
費用面、システム構築面で利点
従来の富士通が提供してきた技術でも、「製造データの見える化」などは実現できたが、従来はBIツール機能や機械学習(マシンラーニング)機能などは別ベンダーのアプリケーションをシステムインテグレーションする形で行ってきた。そのため「それぞれが別ベンダーのアプリケーションを採用する形になるとシステム構築面でもデータ連携が負担になる他、費用面でも高くなる。一括でマイクロソフトのものを利用できることになれば、費用面やシステム構築面で利点を生み出せる」と及川氏は話している。
特に機械学習機能などは、「品質改善や生産性向上に期待感が高まっており、今後さらに活用が広がるものと期待している」(及川氏)。
また、Windows 8の機能により簡単にダッシュボード画面を作れる機能なども活用し、タブレット向けなどのダッシュボードを、工場側で自由に作れるシステムとして提案していく方針だ。「プログラム不要でプレゼンテーションと同じような形でダッシュボードを作れる。工場などでも負担なく使いやすいダッシュボード作成が可能だ」と日本マイクロソフト コンシューマー&パートナーグループ OEM統括本部 第一営業本部 シニアアカウントエグゼクティブ 笹部雄一郎氏は話している。
今後は富士通内での実証の領域を拡大するとともに、両社でノウハウを蓄積し、より効果的なシステム提供を進めていくとしている。
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