25年間培ってきた3Dプリンティング技術を個人にも――造形品質と仕上げで差別化:3Dプリンタの可能性を探る(7)(3/3 ページ)
3Dプリンティング技術を軸にビジネスを展開してきたベルギーのMaterialise(マテリアライズ)。創業25周年の節目に、同社 日本法人であるマテリアライズジャパン 代表取締役社長 ヨウ・アンセウ(Jo Anseeuw)氏に、同社の取り組みと3Dプリントサービス事業「i.materialise」の特長、他サービスとの違いについて伺った。
メイカーズを全力でサポート
――近年のメイカーズムーブメントの盛り上がりをどう見ているか?
アンセウ氏 私はもともとエンジニア出身なので、このブームに私自身も非常にエキサイトしている。マテリアライズとしてもi.materialiseのサービスを通じて、こうした動きを全力で応援したいと考えている。
今よりももっと、個人が誰でも自由にモノづくりを楽しめる世の中になれば、そこからたくさんの新しいイノベーションが生まれてくると思う。こうした動きは、会社組織としても見逃せないものであり、“個”から生まれる“草の根イノベーション”から得られることが多くあると考えている。
i.materialiseの利用者の多くは、3Dデータを制作できる人たちで、エンジニア、インダストリアルデザイナー、ジュエリーデザイナーなどがいる。こういう人たちというのは、本当にバラエティー豊かな作品を出力している。i.materialiseを利用して、趣味で制作した6世紀の刀が美術館担当者の目にとまり、来館者が触れられるレプリカとして採用されたケースもある。「歴史を手で持てる」体験ができるのも3Dプリンタならではだろう。
アンセウ氏 また、3Dモデリングのスキルがない人向けにも、個人のモノづくりを楽しむための仕掛けを提供している。われわれは、i.materialiseのサービスと連携できるAPI(Application Programming Interface)を公開しており、既にこのAPIを活用したアプリケーションサービスがパートナー企業によりいくつか開発されている。例えば、任意のアルファベットを打つだけで、オリジナルアクセサリーが作れるサービスなどだ。
アンセウ氏 このアクセサリーの例のように、自分でカスタマイズしたものを購入するという行為は今後ますます当たり前のようになっていくだろう。ベルギーでは、歩き方や重心を解析して、その人にあった靴のインソールを出力してくれるサービスがある。これも3Dプリンティング技術を活用した新しい価値の創造だといえる。
アンセウ氏 余談だが、2015年4月23〜24日の2日間、ベルギーで「マテリアライズワールドカンファレンス 2015」が創業25周年にあわせて開催される。ここでは、製造業における3Dプリンタを活用した先進的な事例や医療分野における3Dプリンティング技術の可能性など、“3Dプリントの未来”について数多く語られる。また、3Dプリンタを活用した個人のモノづくりにおいても、どのような価値がもたらされるのか、世界で活躍するデザイナーを招き講演やワークショップが行われる。
さらに、このカンファレンスと並行して、「3Dプリント展」も開催される。こちらは世界ツアーも予定されており、もしかすると日本に来るかもしれない。開催される際は、ぜひ足を運んでほしい。
日本の文化を題材にした3Dモデリングコンテスト開催!
――最後に、2015年4月7日からi.materialiseと3Dモデラボの共同企画「兜デザインコンテスト」が開催されているが、どのようなデザインを期待しているか?
アンセウ氏 実は、子どものころから日本文化が大好きで、布団で寝たり、刀や着物を飾ったりしていた。中でも「兜」については、オタクの域に達しているほどだ(笑)。
参加者の皆さんには、伝統的な兜をぜひ一度見てもらって、想像を膨らませてもらいたいと思う。例えば、本物のような精巧なデザインの中に、にやりと笑えるユーモアがあるだとか。ものすごく変わっているデザインなのだが、「これはありかも」と思わせてくれるようなものだとか。あるいは、常識では考えられないものとのミックスも面白いかもしれない……。
とにかく、いろいろな可能性があると思うので楽しんで「兜デザインコンテスト」に挑戦してほしい。
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