25年間培ってきた3Dプリンティング技術を個人にも――造形品質と仕上げで差別化:3Dプリンタの可能性を探る(7)(2/3 ページ)
3Dプリンティング技術を軸にビジネスを展開してきたベルギーのMaterialise(マテリアライズ)。創業25周年の節目に、同社 日本法人であるマテリアライズジャパン 代表取締役社長 ヨウ・アンセウ(Jo Anseeuw)氏に、同社の取り組みと3Dプリントサービス事業「i.materialise」の特長、他サービスとの違いについて伺った。
気軽にハイクオリティな3Dプリンティングを体験
――では、3Dプリントサービス「i.materialise」について教えてほしい。他の3Dプリントサービスとどのような違い、強みがあるのか?
アンセウ氏 i.materialiseは、25年間培ってきたマテリアライズの3Dプリンティング技術を、一般消費者の方たちにも気軽に使ってもらいたいという思いから、5年前の2010年に立ち上げた3Dプリントサービスだ。日本向けには、2013年7月から日本語ローカライズ化したWebサイトを用意し、サービスを開始している。
われわれが考えるi.materialiseの強みは3つある。1つは、25年間、製造業や医療分野といったプロ向けにビジネスを展開し続けてきた実績と経験である。ここまで長年、工業製品の試作支援を行ってきた企業は日本国内にほとんどないだろう。サービス利用者は、わが社のノウハウが凝縮された3Dプリンティング技術やサービスを享受できる。実際に、造形物のクオリティや仕上げ処理などを見ていただければ、その違いを理解してもらえるだろう。
アンセウ氏 2つ目の強みは、指定できる出力用素材の種類と色、仕上げのバリエーションの豊富さだ。現在、17種類の素材があり、色や仕上げの組み合わせにより、90以上のバリエーションから気軽に3Dプリントを楽しむことができる。この数は、日本で展開する3Dプリントサービスの中では最多ではないだろうか。
そして、3つ目は、プロ向けに自社開発している3Dプリンティング関連ソフトウェアの強みを生かしたサービス展開だ。例えば、出力依頼の際、エラーのある3Dデータがアップロードされても軽微なエラーであれば自動修正して、そのまま見積もり金額を提示できる。プロ向けに提供している技術をサービスの一部として利用できる点も、他社にはない大きな違いといえるのではないだろうか。
i.materialiseのサービスは、パーソナル3Dプリンタを活用した個人のモノづくりとは競合しないと考えている。われわれとしては、パーソナル3Dプリンタでは実現できない、もうワンランク上の品質や仕上がりの造形を行いたいという個人からのニーズに、しっかりと応えていきたい考えだ。特に、日本の皆さんは創造性豊かで新しいものへの関心が高いので、3Dプリンティングとの相性は非常に良いと思う。
――ベルギー本社では、100台以上の3Dプリンタが稼働しているとのことだが、どのような種類の3Dプリンタを所有しているのか?
アンセウ氏 i.materialiseでは17種類の素材を扱っているので、約10種類の方式の異なる3Dプリンティング技術を使い分けている。代表的なものは業務用のFDM方式3Dプリンタや、レーザー粉末焼結方式の3Dプリンタだろう。金属系の造形には、ワックス3Dプリントとロストワックス製法を用いている。
アンセウ氏 さらに、2m級の巨大な造形が可能な自社開発の「マンモス光造形機」がある。自動車のバンパーを1回で出力できるもので、面白い事例としては、レディー・ガガが着用したドレスの出力にも使われたことがある。一般からの出力依頼でも造形サイズの大きなものであれば、このマンモス光造形機で3Dプリントすることもある。
ちなみに、自社開発のマンモス光造形機は当社で使うことを想定して開発したものなので、販売する計画はない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.