電子カルテの手入力はもう不要!? 看護師の作業効率を高める「HRジョイント」:未来医XPO
テルモは、「未来医XPO’15」において、体温計や血圧計などの医療用測定機器で測定した値の入力を「FeliCa」を介して行うシステム「HRジョイント」のデモンストレーションを披露した。
テルモは、「未来医XPO’15」(2015年3月28日〜4月5日、神戸国際展示場)において、体温計や血圧計などの医療用測定機器で測定した値の入力を「FeliCa」を介して行うシステム「HRジョイント」のデモンストレーションを披露した。
HRジョイントは、FeliCaを提供するソニーと共同で開発した。FeliCaを組み込んだテルモの医療用測定機器を使って測定を行った後、電子カルテシステムと接続したPCにつなげたICカードリーダーをかざせば、測定値や測定日時などが入力されるという仕組みだ。
500床の病院で年間337万円のコスト削減が可能
同社の調査によれば、体温、最高血圧、最低血圧、脈拍、酸素飽和度、血糖という6種類の測定値をPCのキーボードで手入力した場合の所要時間は35.5秒。これに対して、HRジョイントを使えば、約3分の2の19.9秒に短縮できるという。
テルモの説明員は、「病床数が500、病床利用率が90%の病院で、患者1人の1日当たりの測定回数が2回と仮定すると、その病院における1日当たりの総測定回数は900回になる。これが1カ月なら2万7000回、1年なら32万4000回となり、ぼう大な測定回数になる。この32万4000回に、HRジョイントで削減した入力1回当たりの時間15.6秒をかけると、1404時間になる。看護師の時給を2400円と仮定すれば年間で337万円のコスト削減効果が見込める。看護師はその分だけ、患者に本当に求められている業務に時間を割けるようになるわけだ」と説明する。
HRジョイントのメリットは看護師の作業効率の向上だけにとどまらない。手入力に付きものの誤入力を避けられるのだ。同社の調査では、先述のコスト削減事例と同じ前提条件の場合、手入力だと年間40回の誤入力を起こす可能性があるという。
また、手入力の場合、看護師が後でまとめて行うこともあるため、測定日時が正確性を欠いていることもある。HRジョイントに対応した医療用測定機器は、測定値と測定日時をセットで記録しているので、そういった問題が起こらない。
「HRジョイントは、富士通やNEC、ソフトウェア・サービス、シーエスアイといった大手ベンダーとの協力によって、ほとんどの電子カルテシステムと連携できるようになっている。2014年から約50施設で運用が始まっており、今後も展開を拡大したい」(同説明員)という。
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