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水素ステーション開発も手掛けるホンダの「つくる」「つかう」「つながる」燃料電池車ビッグ3 講演リポート(2)(2/3 ページ)

ついに量産販売が始まった燃料電池車。普及の端緒についたとはいえ、課題はまだまだ多い。「第11回 国際 水素・燃料電池展(FC EXPO 2015)」の専門技術セミナーに、燃料電池車を手掛ける国内大手自動車メーカー3社の担当者が登壇。本連載では、その講演内容をリポートする。第2回は本田技術研究所の守谷隆史氏による講演だ。

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「ミライ」の発表前日に公開した「Honda FCV CONCEPT」

 そして2014年11月17日、トヨタ自動車が「ミライ」の発表を行う前日に、2015年度末までの燃料電池車の量産発売を宣言し、ベース車となるコンセプトカー「Honda FCV CONCEPT」を公開した。併せて、燃料電池車から最大9kWの交流出力を可能にする外部給電器のコンセプトモデル「Honda Power Exporter CONCEPT」も披露している。

 守谷氏は、Honda FCV CONCEPTについて、「小型化した燃料電池スタックを含めたパワートレインを、市販する燃料電池車として世界で初めてセダンタイプのボンネット内に集約して搭載している。これにより、先進のエアロボディデザインと、大人5人が快適に座れるゆとりあるフルキャビンパッケージを実現できた」と語る。

セダンタイプの燃料電池車「Honda FCV CONCEPT」と外部給電器のコンセプトモデル「Honda Power Exporter CONCEPT」
セダンタイプの燃料電池車「Honda FCV CONCEPT」と外部給電器のコンセプトモデル「Honda Power Exporter CONCEPT」(クリックで拡大)

 この他、耐圧70MPaの高圧水素貯蔵タンクを搭載し、満充てんからの走行距離は700km以上を実現。水素タンクの再充填は約3分程度という短時間で完了し、現在のガソリンエンジン車と同等の使い勝手を可能にしている。

 今回新しく開発した燃料電池スタックは、従来型より33%の小型化を図りながら、出力は100kW以上を確保した。出力密度は3.1kW/l(リットル)と従来比で約60%向上している。

「Honda FCV CONCEPT」に搭載する新開発の燃料電池スタック(左)と「FCXクラリティ」に搭載していた従来品(右)のサイズ比較
「Honda FCV CONCEPT」に搭載する新開発の燃料電池スタック(左)と「FCXクラリティ」に搭載していた従来品(右)のサイズ比較(クリックで拡大)

 燃料電池スタックの小型化への取り組みとしては、電極層へのガス供給と、発電時に生成される水の管理を最適化が挙げられる。さらに、低電流密度状態における動作の安定性を保つため、正極(カソード)側電極エリア内の酸素濃度分布から、負極(アノード)側ガス流路内の水素欠乏領域を検知してパージ頻度を最適化することにより、車両における燃料効率の改善を図った。こうした制御を行うとともに、膜電極複合体(MEA)とセル流路の高さを低減して、燃料電池セル1枚当たりの厚みを20%削減。出力密度の大幅な向上につなげた。

新開発の燃料電池セルの断面と構造
新開発の燃料電池セルの断面と構造。MEAを中心とするセルの厚さは1mm(クリックで拡大)

 守谷氏は今後の燃料電池車の普及に向けた課題について、「車両開発については、走行距離、環境適合性、出力性能である程度の見通しを得た。しかし、耐久信頼性、品質保証、コスト低減については互いに影響する課題でありバランス設計が必要」と指摘している。例えば、コスト低減を図るために部品の生産にかける時間を短縮すると、自動車に求められる品質を保てなくなる。同様に、燃料電池スタックに用いる電極の白金など貴金属材料を削減すればコストは低減できるが、耐久性に影響を及ぼす。

 こうしたジレンマを解決していくためにも継続的な技術開発が必要になってくる。また燃料電池車の普及に向けて、法制度や規格の策定で国際調和を進めて、相互認証へつなげていく必要性もあるようだ。

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