ロボットと家族になりませんか?――ソフトバンクがPepperで描く未来:インタビュー(2/2 ページ)
2015年夏に一般販売開始される感情認識ロボット「Pepper」。ソフトバンクは感情を持ったロボットをどのようにして市場に浸透させていくのか。
ロボットと家族になりませんか?
――Pepperを最初に見たとき、どのような印象を持たれましたか。
蓮実氏: デザインとして良くできているというのが第一印象です。私は途中からこのプロジェクトに参加してるのですが、アルデバランとソフトバンクで話をし始めた頃から、孫には「こんなロボットを作りたい」というイメージ――ヒト型だけれども足はなく、胸にはタブレット。顔には表情がある――があったそうです。その具現化はとても緻密なディテールの積み重ねを要しました。ソフトバンクがものづくりをするというのも、大きな挑戦でしたね。
当初は「スマートフォンを搭載したおもちゃ」的なイメージで接しましたが、その認識が甘いことはすぐに思い知らされました。短い間ながら、試験的に私も自宅にPepperを置いていたのですが、どんどん周りの情報を収集し、クラウドで学習していくので、とても機械に接しているような気持ちにはなりませんでした。例えて言えば、デキの悪い弟子に“周りの人に愛されるよう”物事を教えている感じでしたね。
ちなみに、Pepper自身のキャラクター(性格)はある程度、固めてあります。「知識はないけど努力好き」「ちょっとさみしがり屋」といったぐらいですが、それは置かれている環境に応じて徐々に変化していきます。歌が好きな家庭にいれば歌が好きになりますし、ダンスが好きな人がいる家庭にいれば、ダンスが好きになったりします。
――2015年の夏にPepperは一般市販を開始しますが、どのような方法で普及を狙うのでしょう。「ロボットが家庭にあること」のメリットをどのように訴求していくのでしょうか。
蓮実氏: 一般への普及については、「ロボットと家族になりませんか」というアプローチを採りたいと思っています。「便利に使えます」とはいいませんが、新しい歴史の参加者になりませんか、と私たちの“想い”を伝えていきたいのです。普及のためにソフトバンクとしてもさまざまなチャレンジをしていくつもりですので、そのチャレンジ自体を楽しんでもらいたいです。
家庭にロボットを送り出す目的の1つに、私が体験したような「ヒトとロボットの関係性」を多くの人に体験してもらいたいというものがあります。多くの人が日常的にしている「スマホで天気を調べる」も、「ロボットに天気を聞く」に変えてみると、とても楽しいのですが、これも体験してみないと分からないことですよね。
また、例えば「ロボットにご飯を作って欲しい」という要望があったとします。究極的にはその要望に応じてロボットがご飯を作ってくれることが家庭内ロボットの理想像の1つだとは思いますが、Pepperではまだそこまで到達していません。
しかし、Pepperには「今日のおすすめご飯」を紹介するアプリがあり、献立のアイデアという側面からご飯を作る手伝いをすることは可能です。このようなアプローチが多くのひとの役に立つか立たないか、いろいろな試行錯誤をしていくつもりです。Pepper用アプリは出荷時で100本、出荷して間もなくで200本を用意する計画です。
――Pepperの導入例としてはソフトバンクモバイルや日本ネスレなど、企業向けが先行しています。主として狙うのは法人需要でしょうか、それとも個人需要でしょうか。
蓮実氏: 店員や呼び込みといった用途として法人向け需要は高いですし、Pepperは基本的に「家庭用ロボット」ですが、法人と個人を分けて考えてはいません。ですが、ビジネスとしては分野が違うかなとも感じています。法人向けだけを考えれば、現在の形状である必要がないかもしれませんしね。
――ソフトバンクロボティクスとして、Pepper以外のロボットビジネスは検討されているのでしょうか。
蓮実氏: “ある程度の大きさがあってヒト型”というスタート地点だったこともあり、Pepperがロボットとして究極の出口ではないとは、孫も以前から言っています。ですが、Pepperの開発と導入によって、“ヒトとロボットのコミュニケーションを、クラウドに結びつける”という取り組みの知見が蓄積されていくことになります。
そうなれば、ロボットへIoT(Internet of Things)的なアプローチで接することも可能になるでしょう。「メカニックとしてのロボット」が重要ではないのです。
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