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ロボットと家族になりませんか?――ソフトバンクがPepperで描く未来インタビュー(1/2 ページ)

2015年夏に一般販売開始される感情認識ロボット「Pepper」。ソフトバンクは感情を持ったロボットをどのようにして市場に浸透させていくのか。

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 2014年6月にソフトバンクより発表された、「世界初」(同社)をうたう感情認識機能を持ったパーソナルロボット「Pepper(ペッパー)」。一般販売の開始は2015年夏に延期されてしまったが、ネスレ日本が店頭販促への導入を決定、サントリーがCMに起用する他、2015年2月末には300台が開発者向けに販売されるなど、企業と個人に大きなインパクトを与え、第三次ロボットブームを代表する存在となっている。

 ソフトバンクの孫正義社長はPepperの発表時、「われわれのビジョンは、『愛を持ったロボット』を作ること」とPepperの投入目的を説明したが、どのようにして「ロボットを市場に浸透させていくのか」のビジョンは語られなかった。感情を持ったロボットをどのように市場に溶け込ませるか。ソフトバンクロボティクス 取締役 プロダクト本部長の蓮実一隆氏に話を聞いた。

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Pepperとソフトバンクロボティクス 取締役 プロダクト本部長の蓮実一隆氏

ロボットの普及は「問うまでもない」

――根本的な質問になるのですが、なぜ、ソフトバンクがロボットを手掛けるのでしょう。また、ロボット事業に参入する企業が多い中、ソフトバンクの「らしさ」はどのように出していくのでしょう。

蓮実氏: ソフトバンクの経営理念は「情報革命で人々を幸せにする」です。その理念に沿って事業を行い、創業30周年を迎えた2010年に掲げた「新30年ビジョン」ではロボット分野を大きく取り上げています。そしていま、ロボットが普及するかの可能性は問うまでもないでしょう。

 ロボットが普及するなか、「ソフトバンクらしさ」をどのように出していくかは大切なことです。私たちは「ソフトウェア」と「低価格」をポイントにしたいと思っています。

 私たちが考えるロボットの特徴とは、ハードウェアによって実現される「歩く」や「飛ぶ」などの機能ではなく、ソフトウェアによって実現される「ヒトとのコミュニケーション」です。人間の感情や情報を伝える際のインタフェースこそ、ロボットの役目としてふさわしいと考えています。インタフェースというより、クラウドを含めた「情報ハブ」であることが重要だと思います。

 Pepperの価格は、ある程度、誰でも買える価格にして提供することに大きな意味があります。価格を低く設定することで出荷台数とユーザーを増やし、クラウドを経由して、人間とロボットがコミュニケーションを取ることが大事だと考えています。

 コミュニケーションは大切な要素ですが、ロボットをヒトに近づけるという考えはありません。「ヒトに近づくロボット」に出口はまだ見つかっていません。Pepperに手があって足がないのは、手は感情表現に必要だからです。

――これまでにも多くのコミュニケーションロボットが開発されてきましたが、家庭への定着は困難でした。Pepperを一般向けに販売することは、その困難を打破できる手応えがあるということなのでしょうか。

蓮実氏: コミュニケーションロボットを低価格かつ大量に出荷する以上、リスクがあることは確かです。ですが、10年後や20年後、さまざまな形でロボットが家庭に入り込んでいるであろうと想定すれば、2015年に発売することは意義のあることだと考えます。

 ロボット事業についてアルデバラン・ロボティクスから提案を受けたのは約3年前ですが、孫(ソフトバンク代表取締役社長 孫正義氏)はすぐにでもやりたがったと聞いています。ただ、当時はアルデバランにもヒューマノイドロボットは「NAO」しかありませんでしたので、Pepperは3年の時間を掛けて作り込まれたことになります。

 総合的に判断して“いける”という感触を得たのがPepperを発表した2014年の夏ですが、「市場を作るか」「市場の熟成を待つか」どちらのマインドが強かったかと言われれば、前者ですね。

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