新型「プリウス」の燃費40km/l、TNGAハイブリッドだけでは届かない:エコカー技術(2/2 ページ)
トヨタ自動車が2015年に市場投入する「Toyota New Global Architecture(TNGA)」を導入した新型車の代表例として、各種報道で挙げられているのが4代目となる新型「プリウス」だ。新型プリウスはJC08モード燃費が40km/lを上回るといわれているが、TNGAベースの新開発のハイブリッドシステムだけではその燃費は実現できない。
JC08モード燃費の重量区分を1つ下に下げられれば……
もしJC08モード燃費を40km/l以上にするのであれば、空力性能の向上と車両重量のさらなる軽量化が必要になる。しかし空力性能については、3代目プリウスの空気抵抗係数はCd値が0.25とかなり小さい。燃費向上に効果を出すレベルで空力性能を高めるのは困難な可能性が高い。
つまりJC08モード燃費40km/l以上の達成には車両重量の軽量化が必須になる。ではどこまで車両重量を減らせばいいのか。最低でも115kg減の1195kgまで減らさなければならない。3代目プリウスのLグレードは、JC08モード燃費の重量区分で1196〜1310kgの枠に入っている。これを、さらに1つ下の重量区分である1081〜1195kgにできれば、JC08モード燃費を計測する際の負荷を減らせる。
重量区分1196〜1310kgの平成27年度燃費基準が17.2km/lであるのに対して、重量区分1081〜1195kgの平成27年度燃費基準は18.7km/l。新開発のハイブリッドシステムの搭載により、重量区分1196〜1310kgで37.5km/lに達した新型プリウスを、重量区分1081〜1195kgで燃費計測すれば、単純計算で37.5×18.7÷17.2=40.7km/lになり、40km/l以上を達成できる。
115kgの軽量化は、新開発のハイブリッドシステムで小型化するモーター/インバータ/電池と、新プラットフォームの高剛性化によって実現するとみられる。例えば、ハイブリッドシステムの二次電池をニッケル水素電池からリチウムイオン電池に置き換えれば、かなりの軽量化を見込めそうだ。
また新プラットフォームは、従来比で30〜65%の剛性向上を図っており、その分だけプラットフォームに使う材料の量を減らせる。レクサスブランドで採用している、「レーザースクリューウェルディング」や「構造用接着剤」など使えば、約6年前の2009年5月に発売した3代目プリウスよりも大幅に軽量化できる可能性がある(関連記事:究極の自動空調に高剛性ボディ――新型「レクサスLS」は新技術満載)。
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