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みんなに、モデルベース開発のことをもっと知ってほしいモデルベース開発奮戦ちう(10)(3/4 ページ)

ついにモデルベース開発を適用した「CVT∞」を完成させた京子たち三立精機の制御設計チーム。成果報告のための会議で説明担当になった京子だったが、そこでこれまでとは異なる種類の課題にぶつかることになった。

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モデルベース開発のことを正しく伝えられたのかな?

 山田課長と一緒に制御設計チームのデスクに戻ろうとするところで、背後から声をかけられた。CVT実験部の越光部長だ。


越光

山田くん。モデルベース開発と言うのは、ボタンを押しさえすれば欲しい答えを出してくれるそうじゃないか。便利になったなぁ。


山田

それは少し違います。ボタンを押すだけでは欲しい答えは得られません。モデルの使い方を工夫する必要があります。


越光

なぁーんだ。それじゃあ使えないな。


山田

面倒に思われるかも知れませんが、一度、汎用性のあるモデルを開発しておけば、同様の構成になっているシステムであれば、微修正して再利用できます。


越光

そうなのか。何だかすごいな。


山田

モデルベース開発の旨味を最大限に引出すには、どのような前提条件の中で、どのような結果を得たいのかを考えてモデルを開発し、モデルの使い方を工夫する必要があります。


越光

なるほど。モデルベース開発を活用するには、創意工夫が必要になるのか。


山田

おっしゃる通りです。


越光

ぜひまた話を聞かせてくれよ。


 手を挙げて去って行く越光部長の後ろ姿を見つめながら、私は肩を落としてつぶやいた。

京子

私の発表は、皆さんにモデルベース開発のことを正しく伝えることができなかったのでしょうか?


山田

一度に全てのことを伝えきることは難しいわ。巻き返し、繰返し、何度でも。伝える努力を続けることこそ、最も大切で難しいものよ。頑張りましょう。


 山田課長はチームメンバーを集めて、社内発表の反響について説明し、今後の展開や対応策について話し合った。その結果、各部署に出向いて、どんな疑問や課題を抱えているのかをヒアリングして回るところから着手することになった。モデルベース開発の啓発活動の開始である。

 このモデルベース開発啓発活動を一通り終えてから、定例の反省会ということで互いの取り組みについて情報共有することになった。

山田

各部署との連携強化に向けたモデルベース開発の啓発活動を始めましたが、その感想や意見を聞かせてください。


大島

当初は、トップダウンの指示とはいえ、手間暇の掛かる啓発活動をすることに釈然としない部分が多少ありました。しかし、あらためて関連部署に足を運んでヒアリングをする中で、啓発活動の大切さを認識させられました。


京子

これまで、関係部署に足を運ぶ目的といえば、モデルを開発するために必要な情報を提供してもらうことでした。けれども、啓発活動をする中で、それだけではダメだと考えるようになりました。


 他からも意見が上がり始める。

確かに。関係部署に足を運ぶ目的が、モデルを動かすことだけになっていた。ゴールになっていた。


関連部署の考え方や立場などを理解しようとしたり、考えたりする余裕もなかった。


山田

関連部署の考え方や立場をわきまえた上で、全社が一丸となってモデルベース開発を推進していくプランを構築しましょう。そして、このプランを率先して受け入れてもらえるように、啓発活動を継続しましょう。


京子

モデルベース開発という技術を正しく磨き、正しく使い、正しく伝えられるようにします。私、前のめります!


 山田課長は、啓発活動における質疑応答や反省会の内容を大滝部長に報告した。それを受けた大滝部長も、モデルベース開発を媒体とした連携体制の強化を指示した。

 モデルベース開発に関する継続的な質疑応答、モデルベース開発の実績報告や展開によって、関連部署との信頼関係も徐々に構築されていった。

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