みんなに、モデルベース開発のことをもっと知ってほしい:モデルベース開発奮戦ちう(10)(2/4 ページ)
ついにモデルベース開発を適用した「CVT∞」を完成させた京子たち三立精機の制御設計チーム。成果報告のための会議で説明担当になった京子だったが、そこでこれまでとは異なる種類の課題にぶつかることになった。
ビビってても仕方がない
大滝部長は、私の発表に、三立精機車載電装開発部の全部員が最優先で参加するよう通達していた。もちろん制御設計チームにもその通達は届いていたので、引き受けたときの意気込み以上に、緊張や不安が大きくなる。
発表当日、最優先参加の通達通り、三立精機の講堂に車載電装開発部に所属する約200人の技術者が集まった。
当たり前だけど、たくさんの人の前で発表するんだよね……。緊張するぅ〜。やばいか……。
私は足が震えていることに気付く。
冒頭、大滝部長から今回の社内発表の目的が紹介される。そして車載電装開発部の部員だけでなく、尾上取締役をはじめ、技術関係の役員の多くが参加していることを知らされる。
えっ、役員まできてるんだ。今目が合っちゃったような……。
足だけじゃなくて指先まで震えるくらい緊張してきた。
(ええい、こんなとこでビビってても仕方ない。前のめっていかなきゃ!)
震えが声に出ているような気がしつつも、発表を始める。
そうすると、当初は厳しいまなざしだった(ように感じた)参加者の人たちも、発表が進むにつれ聞き入ってくれていることが十分に分かった。
このような成果を達成しつつ、私たちのCVT∞を「バンビーナ」に搭載することができました。
何とか発表終了。あっという間に時間が過ぎ去ったような気がした。
そして、大きな拍手が講堂に響き渡っていた。私の頭はもう真っ白になっていたけれど、妙に心地よくもあった。
大滝部長の締めのあいさつとともに社内発表も終わり、
(これで終わりか〜。)
とほっと一息。会場から出ようとすると、私に質問があるという参加者の方に呼び止められた。それに答えようとすると、他の参加者からも質問が! 質問する人がどんどん増えて、うれしいやら、困ったやら。
どうしよう……。
そこで山田課長が助け船を出してくれた。
別途、詳細な説明の場を持ちますので、今日はこれくらいでよろしいでしょうか。申し訳ありません。
何とかその場を収めてもらい、やっと一息つくことができた。
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