ウェアラブル製品の規制対応と課題:ウェアラブル(2/2 ページ)
市場拡大が見込まれるウェアラブル機器市場だが、“携帯”から“装着”に変わることで利便性と同時にリスクも増大する。本稿では、こうしたウェアラブル製品に対するリスクと規制の現状および課題について解説する。
ウェアラブル製品に対する規制・評価規格の例
ウェアラブル製品に対する規制・評価規格の例を以下に示す。
- 製品安全
- 情報処理機器 (IEC 60950-1、IEC 62368-1)
- 医療機器(IEC 60601-1)
- バッテリー(IEC 62133) など
- EMC(電磁環境両立性)
- 日本電波法
- 米国FCC Part 15C/15B
- 欧州R&TTE指令、EN 300328、EN 301489-1/-17、EMC指令、EN 61000-6-1、EN 61000-6-3 など
- SAR(Specific Absorption Rate)
- FCC Part2.1093、EN 50360、EN 62311 など
- 相互接続性
- Bluetooth
- Wi-Fi
- Qi
- PMA
- CAT(Carrier Acceptance Test) など
- プライバシーと情報セキュリティ
- エネルギー効率性
- バッテリー特性、製品の駆動時間測定 など
- 化学物質
- CA Proposition 65、RoHS指令、REACH など
- 環境適合性
- UL 2887 など
ULは、ウェアラブル製品向け環境関連規格として上記UL 2887(Sustainability Outline for Wearable Electronics Products)の評価アウトラインを2014年10月に発行した(*注2)。これにより、スマートウオッチ、スマートグラスなどのウェアラブル製品に対するサステイナビリティ(持続可能性)を認証する。
注2:評価アウトラインとは、UL規格が発行されるまでの評価・認証に使用される要求事項で、サブジェクトとも称される。規格策定パネル(STP)における検討・投票が行われた後、正式なUL規格として発行される。
ウェアラブル製品に対する規制と留意点
ウェアラブル製品に対する規制は、先進国を中心にその適用が始まったばかりであり、上述したリスクや評価試験が十分に実施されている訳ではない。国および地域毎に規制の適用やその厳しさの度合いも異なることから、製品設計・開発に際しては入念な準備と検討が必要である。
製品安全、EMC/無線に関しては、世界的に見ても類似性の高い評価試験が要求されているが、例えば、EUでは電気製品に含有される化学物質に対して厳しい規制を課し、環境影響評価に重きを置いている。
近年、医療現場では、ワイヤレス環境でバイタルデータをやりとりする機器が増えてきている。ウェアラブルな医療機器の例としては、脈拍や血圧などのバイタルデータをワイヤレス環境で取り扱い、医療用途として利用される装着型機器などが挙げられる。
米国連邦政府は、この領域における取組指針を示すガイドライン策定の必要性を強く認識し、FDA Safety and Innovation Actに基づき、FDASIA WG(ONC, FCC, FDAなどからなるワーキンググループ)によってAAMI/UL 2800(Medical Device Interoperability)などの規格を策定中である。
最後に
これまでウェアラブル製品に潜在するリスクとそれらに関連する規制、および評価試験を説明し、製造者および流通事業者が留意すべき点を中心に紹介した。
ウェアラブル製品に対する規制が十分に確立されていない状況であることから、製造者および流通事業者は、
- 製品設計・開発の初期段階からのリスクや規制の分析
- 詳細な製品プロファイル(用途、使用環境など)の構築とリスク分析の実施
- 製品を投入するターゲット市場の特定
- ターゲット顧客や市場特有の付加的要求事項(性能試験など)の特定
- ウェアラブル製品に対する規制や試験に関する幅広い知識や経験を有する第三者の選定
上記の点に留意する必要があるといえる。
筆者プロフィル
中里 啓(なかざと さとし)、北原 誠(きたはら まこと)、星 太郎(ほしたろう) UL Japan
コンシューマーテクノロジー事業部およびライフアンドヘルス事業部にて、ウェアラブル製品の製品安全、EMC・無線、環境・化学分析、医療用途での評価試験・認証業務などに従事。各国・地域への規制対応等のグローバル出荷の支援も行っている。
ULは、長年の経験と知識を基に、こうした潜在的リスクに対する様々な試験・認証・認可取得サービスを提供し、製造者および流通事業者のタイムリーな海外進出をサポートしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ソニーの片眼用ウェアラブルモジュールがスポーツ分野を狙う、ミズノが採用
ソニーのウェアラブル(アイウェア)端末向け片目用ディスプレイモジュールがスポーツ分野で採用された。ミズノが2015年度内の発売を目指して開発している「SCOUTER(スカウター)」だ。 - ウェアラブル機器の冷却にも、厚さ1mmの超薄型冷却デバイス
富士通研究所がスマホやタブレット、ウェアラブル機器などに利用できる超薄型冷却デバイスを開発した。 - ウェアラブル端末は「デザイン」が大事、男女間で注目度に差も
ウェアラブル端末に「興味がある」と解答した女性は男性の約半分。期待する用途も男性はビジネス目線、女性は自分と家庭目線と関心と意識に大きな差が。リクルートテクノロジーズ調べ。 - 無数のセンサーが隠れた運動機能異常を発見する
富士通研究所ら3社が、室内や身につけた無数のセンサーから取得した情報を元に、隠れた運動機能異常を早期発見する技術を開発したと発表した。2017年の実用化を目指す。 - 最上位モデルは128万円より、Apple Watch発売日決定
Appleのスマートウオッチ「Apple Watch」の発売日や価格など詳細が発表された。スタンダードモデルの「Sport」は4万2800円、18金を使用した最上位モデルは128万円からの提供となる。