テーマは「デジタルと手仕事の融合」――旅するモノづくり夫婦「kuluska」:zenmono通信(2/3 ページ)
モノづくり特化型クラウドファンディングサイト「zenmono」から、モノづくりのヒントが満載のトピックスを紹介する「zenmono通信」。今回は、モノづくりユニット「kuluska(クルスカ)」の藤本夫妻にお話を伺った。
enmono三木氏 どのくらいの期間で習得できたのですか?
kuluska直紀氏 3カ月くらいです。2012年の夏のワークショップに参加し、年末にはレーザー・デザイン・フォーラム主催のレザーコンテストに応募して、社会企画部門でグランプリを受賞しました。
enmono三木氏 お仕事をされながらですよね。その頃は、あやさんは(直紀さんとは)別の会社にお務めで。
kuluskaあや氏 そうです、IT系の企業にいました。私も彼も“2足のわらじ”を履いていた状態で、「でもやっぱり、モノづくりをしていきたい」という思いが一番高まった時期でした。kuluskaでやっていることは、「共創するモノづくり」。それ対して、レーザーカッターであったりテクノロジーの可能性に気付けたのは、kuluskaにとって大きな転機でした。
enmono三木氏 このスリッパがどのような経緯で「旅するデザイン」というコンセプトになっていったのでしょうか?
kuluska直紀氏 このスリッパを企画してまず、ファブラボ鎌倉でワークショップと展示をしました。世界中のファブラボを旅しながら映画を撮っているJens(イェンス)というノルウェー人がいるんですけれども、彼がファブラボ鎌倉に来た時、私たちの展示を見てくれていたんですね。彼はその後、ケニアにあるファブラボに行き、現地の人から「革を使って観光客に売れるものを考えてくれないか」という依頼を受けたそうです。それで、ファブラボ鎌倉の渡辺さん経由で「スリッパのデータをオープンソースとして発表してくれないか」という話があったので、私は「それは素晴らしいな」と思ってデータを送りました。Jensは、スリッパのソールにアフリカの大地のひび割れを表現しました。アフリカには特徴的なデザインがあると気付いて、それを地域のデザインとして落とし込もうとしたのです。
enmono三木氏 面白いですね。
kuluska直紀氏 観光客に、「これを履くと、いつでもアフリカの大地を感じられますよ」というストーリーを持って販売します。彼はワークショップで、作り方だけでなくどういう販売をしたらいいのかまで共有したのです。Jensは旅のまとめとして、「Fab9」(第9回ファブラボ代表者会議:2013年)の最終日に映画『Making Living Sharing』を発表しました。映画の3分の1くらい、「kuluskaのスリッパが旅をして発展していく話」を使ってくれていて……。データをオープンにした時は、ここまで広がるとは全く想像していませんでした。デザイン自体を手放した時にさまざまな広がりが生まれるのを体験し、「このオープンデザインの取り組みを日本でやってみたらどうなるだろう」と考えました。
enmono三木氏 日本各地、ワークショップで。
kuluska直紀氏 参加者の方がデザインを変えながら、日本の各地でワークショップをしていきました。お子さんの絵を印字する方がいたり、動物や靴の形のスリッパがあったり。
enmono三木氏 さまざまなバリエーションがありますね。
kuluska直紀氏 ワークショップではサイズを自分の適正サイズにできます。また、革がきれいにカットされていたり穴が開いていることによって、通常言われているレザークラフトの難しさがうんと下がっているので、アイデアを膨らませる楽しい部分を皆さんに体験してほしいのです。「革が余ったから、丸く切ってここに加えよう」とその場でデザインを変えたり、隣の人のデザインを「いいな」と感じたら、そのテイストを取り入れてもいいのです。
enmono三木氏 マネしてもいいのですね。
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