東アジア最大の天体望遠鏡を実現する3つの新技術:宇宙開発(3/4 ページ)
京都大学 宇宙総合学研究ユニットの特任教授でありユビテック顧問も務める荻野司氏が、東アジア最大となる口径3.8mの光学赤外線望遠鏡の開発プロジェクトについて語った。同望遠鏡の開発には、日本発のさまざまな技術が利用されているという。
18枚の鏡を50nmの精度で制御
今回のプロジェクトのために開発された2つ目の技術が、18枚の分割鏡の動きを制御するシステムだ。分割鏡を高精度に加工するのと同じく、この制御技術にも高い技術力が求められる。数トンにも及ぶ分割鏡を正確に保持して、なおかつ観測に合わせて素早く動かさなくてはならない。今回のプロジェクトでは、分割鏡を支える支援機構とアクチュエーターに加え、鏡の位置を測定する光学センサーや、位相カメラなどを全て独自に開発している。これらを組み合わせた制御システムによって、18枚の分割鏡を50nmの精度で制御することを目標にしているという。
軽量かつ強度の高い架台を設計
天体望遠鏡の素早く正確な動作に貢献するため、軽量かつ強度の高い架台の製作も今回のプロジェクトの重要なポイントとなった。今回開発された架台を通常のものと比較すると、鏡筒と高度軸を接続するセンターピースと呼ばれる大型の部品が使われていないという特徴がある。
センターピースが無くとも、高い強度と安定した観測が行えるように架台の設計にはさまざまな工夫がこらされた。例えば主鏡(18枚の分割鏡)を真下から支えるアークレールは、2本の大きな円弧状とすることで構造全体に曲げモーメントが加わらない仕組みになっている。また、このアークレールを直接駆動モーターで動かすことにより、伝達機構と鏡筒にねじれトルクが発生しない。大型のアークレールとこうした駆動方式を採用することで、エンコーダは分解能が得やすくなり、さらにモーターの運動量とエンコーダの検出値に差が生じにくくなるメリットもあるという。
しかし、センターピースが無いと、主鏡、副鏡、第三鏡という3つの光学系要素の相対位置が鏡筒の回転によってずれやすくなるというデメリットが生まれてしまう。これを補うため、構造最適化には生物進化を模倣した遺伝的アルゴリズムを利用し、相対位置がずれにくいかつ軽量な構造を実現したという。荻野氏は「重たい鏡をより軽い構造で、そして変形を小さく抑えて支えたいというのがこの架台の開発コンセプト。試験では、秒速1度という移動性能を達成している」と説明した。
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