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知っているようで知らなかった文章作成術のキホン(その2)レイコ先生の「明日から使える! コミュニケーションスキル」(12)(2/4 ページ)

前回解説した「分かりやすい日本語」だけでは、分かりやすい文書は作れません。分かりやすい文書作成とは、「パラグラフで文書を構造化する」ことです。

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総論から書き始める

 文書を構造化するはじめの一歩として「総論」のパラグラフから書き始めるようにします。総論というのは、その文書の目的や結論など重要な情報をまとめたものです。他の言い方だと「サマリー」や「アブストラクト」と言ったりする場合もあります。その文書でどんなことが書かれているのかをざっくり把握するための情報が書かれているのが総論です。イメージとしては、図2のように文書の始めに総論のパラグラフが配置され、それ以降に各パラグラフが続いていく形となります。


図2

 ビジネス文書は、起承転結ではなく重点先行の考え方が大切です。日本には、文章の組み立て方として有名な考え方に「起承転結」があります。起承転結とは、始めに言いたいことを起こして、次にそれを承けて、さらに言いたいことを転じて、最後に結ぶといった文章の組み立て方です。この考え方の特徴は、言いたいこと(重要なこと)が最後にくることです。そのため、スピーチや小説などストーリー性が求められるものには適していますが、ビジネス文書には適していません。なぜなら、仕事では1日で大量の情報を扱うため、最後まで読まなければ重要なことが分からない文書では非効率だからです。ビジネスのコミュニケーションでは「結論から述べよ」と良く言われますが、ビジネス文書でも重要なことを先に書く「重点先行」の考え方が大切です。

 総論から始めるメリットは2つあります。1つ目は、その文書を読み進むべきか判断しやすくなる。2つ目は、読論理展開を予想でき理解しやすくなることです。

読み手が判断しやすくなる

 読み手は文書の全てを読むわけではありません。小説などの読み物とビジネス文書の一番の違いがこの点です。小説は最後まで読むことを前提に書かれていますが、ビジネス文書はそれではダメなのです。書き手の立場からすると残念に思うかもしれませんが、ごく当たり前のことです。毎朝、新聞を読んでいる人で全ての記事を読んでいる人がどれくらいいるでしょうか? 恐らく少数のはずです。多くの人は、自分に関心や関係のある記事だけを選別して読んでいるはずです。ビジネス文書も同じで、自分に関係がある箇所だけを読みたいのです。特に、忙しい立場になればなるほどそうです。総論は、読み手がその先を読み進めるべきかどうかを判断する材料となるのです。

読み手が理解しやすくなる

 ダラダラと先が見えない話は「何が言いたいのか分からない!」と聞き手をイライラさせるものです。文書も同じで、その先で何が書かれているのか、全く分からない状態だと読み手の理解は進みません。例えば、「新製品について3つの観点から解説します。1つ目は性能。2つ目はデザイン。3つ目は価格です」と書かれていれば「性能、デザイン、価格の順で書かれているんだな」とその後の論理展開を予想できるようになります。この予想が読み手の理解を促進する役割を果たします。「この文書にはこんなことが書かれているんだな」と予想してもらうために総論が必要なのです。

 総論は「目的」と「主張」の2つの要素で構成します。目的では、その文書を作成するきっかけとなった背景や必要性、目的を書きます。主張では、その文書で伝えたい結論や結論に関連する重要な情報を書きます。具体的な例を見てみましょう。図3は調査報告書で総論を書く場合の例です。赤枠で囲った目的のパートにて、背景、必要性、目的がまとめられています。青枠で囲った主張のパートでは、結論と重要な情報が書かれています。この総論を読むだけで、「この調査がなぜ行われるのか」「その結果どんなことが分かったのか」などざっくりとした情報を把握できるはずです。では、次に総論以降のパラグラフはどのように書けばよいかを解説してきます。


図3

パラグラフの先頭はトピックセンテンスで始める

 パラグラフは「トピックセンテンス」で書き始めるようにします。トピックセンテンスとは、そのパラグラフで書き手が伝えたいメッセージを要約した文です。

 トピックセンテンスを作るポイントは2つあります。1つ目は1文で表現することです。1つのパラグラフでは1つのトピックのみを扱うため、トピックセンテンスも1文で表現します。もし、トピックセンテンスが2つの文になってしまう場合は、2つのトピックが書かれている可能性があるため、パラグラフを分割することを検討します。2つ目は、トピックセンテンスはパラグラフの先頭に書くことです。ビジネス文書は重点先行で書くと上述しましたが、各パラグラフでも同様です。そのパラグラフで何を伝えたいのかということを先頭に書くようにします。

 トピックセンテンスをパラグラフの先頭に書くことで以下の3つの効果が期待できます。

1.飛ばし読みができる

 トピックセンテンスは、そのパラグラフで伝えたいメッセージですので、各パラグラフのトピックセンテンスだけを集めて読めば、文書全体として伝えたいことをおおよそ把握できます。そのため、読み手は時間がない場合はトピックセンテンスだけを飛ばし読みすることも可能なのです。

2.読み進むべきかどうか判断できる

 トピックセンテンスが先頭にあることで、読み手はそのパラグラフを読み進むべきかどうかを第1文で判断できるようになります。トピックセンテンスを読んで、納得できた場合は、その先を読み飛ばすことができます。詳しくは後述しますが、トピックセンテンスの後は、トピックセンテンスをより分かりやすくするための説明や具体例などが書かれているためです。

3.重要な情報の読み落としが減る

 トピックセンテンスを先頭に書くことで書き手が伝えたいメッセージをより強調できます。なぜなら、パラグラフの先頭という場所は、読み手の目に付きやすい場所だからです。既に述べたように読み手は文書を隅から隅まで読むわけではありません。そのため、より目立つ場所に重要な情報を置くことで、読み手が重要な情報を読み落とすということを防げるようになるのです。

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