知っているようで知らなかった文章作成術のキホン(その2):レイコ先生の「明日から使える! コミュニケーションスキル」(12)(1/4 ページ)
前回解説した「分かりやすい日本語」だけでは、分かりやすい文書は作れません。分かりやすい文書作成とは、「パラグラフで文書を構造化する」ことです。
本連載の登場人物
小山田和成(オヤマダカズナリ)
中小ソフトウェアメーカーに勤務するエンジニア。入社8年目の30歳。技術力においては社内から一目置かれる存在で今年から係長に昇格。しかし、奥手な性格でコミュニケーションは苦手。通称「カズ君」。
杉本麗子(スギモト レイコ)
外資系ソフトウェアメーカーにて人事部長を歴任。その後、中小企業診断士を取得して独立。現在は、「ツンデレ」キャラを生かして売れっ子の人事コンサルタントとして活躍中。通称「レイコ先生」。
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
カズ君、元気? その後、企画書は上手く書けたかしら?
分かりやすい日本語は書けるようになったので、自信満々で再提出したんですけど、またダメ出しされてしまって……。
あら、そうなの? ちょっとその企画書見せてみて。……これじゃダメね。日本語は分かりやすいけど、文書としてはとても分かりづらいわ。そういえば、この前「分かりやすい文書の作り方」については教えてなかったわね。
え〜〜、そうなんですか。そんな大事ことがあったのなら一緒に教えてくださいよ〜。
過ぎたでことでガタガタ言わないっ!!
ヒィーーー!!
……まあいいわ。それじゃ、今日は分かりやすい文書を作るためのポイントを教えてあげるわね。
よろしくお願いします!
分かりやすい日本語だけでは、分かりやすい文書は作れない
前回の記事では分かりやすい日本語の書き方について解説しました。「主語と述語」「修飾語」「接続詞」の使い方を意識することで、1つ1つの文は明確に書けるようになったと思います。しかし、残念ながら分かりやすい日本語が書けても、それだけでは分かりやすい文書は作れません。文書にとって1つの文は、1つのパーツにすぎません。木造住宅で例えるなら、1つの木材が文であり、家が文書となります。良い家を作るためには、良いパーツに加えてしっかりとした設計図が必要です。文書もそれと同じでどのように設計するかが考えられていないと、良い(分かりやすい)文書にはならないのです。そこで、今回は「分かりやすい文書の作り方」について解説します。結論を先に言ってしまうと、分かりやすい文書を作るためには「パラグラフという固まりで文書を構造化する」ことです。パラグラフや構造化というと何やら難しそうに感じるかもしれませんが、言い換えると「読み手が理解しやすい形に文章を整える」ということです。それでは、本題に入っていきましょう。以下の5つのポイントを具体的に解説していきます。
- パラグラフという単位で文書を構造化する
- 総論から書き始める
- パラグラフの先頭はトピックセンテンスで始める
- サブセンテンスでトピックセンテンスを補強する
- 縦と横の関係を意識して各パラグラフをつなぐ
パラグラフという単位で文書を構造化する
パラグラフとは、あるトピックについて、書き手の考えを述べた文の固まりです。1つのパラグラフは複数の文の集まりで構成されますが、1つのパラグラフでは1つのトピックだけを扱います。2つのトピックを1つのパラグラフに押し込んだり、1つのトピックを2つのパラグラフに分けたりしてはいけません。英語の「paragraph」を辞書で調べると「段落」という訳が出てきます。日本で段落というと「読みやすい長さで文章を区切る」というニュアンスで理解している人が多いと思いますが、パラグラフは文章の区切りではありません。パラグラフとは、書き手の考えを示した意味の単位です。
パラグラフは論理的な文書のための固まりです。各パラグラフは、書き手の考えの固まりであるため、それらを文書のレイアウトに一致させることで図1のように読み手は書き手のロジックを理解しやすくなります。自分の考えを相手に正しく伝える必要があるビジネス文書ではパラグラフを用いた文書作成が最適なのです。一方で、小説やエッセイなど読んで楽しむための文書では書き手のロジックを伝える必要がないためパラグラフを使う必要はありません。パラグラフとは何かが理解できたと思いますので、次は、パラグラフを用いてどのように文書を構造化すれば良いか見ていきましょう。
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