リチウムイオン電池の正極材料で日独タッグ、「車載分野は三元系が伸びる」:電気自動車(2/2 ページ)
ドイツ化学大手のBASFと戸田工業は、リチウムイオン電池の正極材料を手掛ける合弁会社「BASF戸田バッテリーマテリアルズ合同会社」を設立した。電気自動車やプラグインハイブリッド車などに用いられる車載リチウムイオン電池の市場拡大を視野に入れた提携になっており、今後の車載分野で採用が広がる三元系正極材料に注力する方針だ。
3種類の正極材料
BTBMの事業内容は「日本におけるリチウムイオン電池正極材料の研究開発・製造・マーケティング・販売」となっている。つまり、日本国内の顧客向けには、BTBMが主導権を持って事業を展開することになる。海外展開についても、BTBMの製品をBASFがグローバルネットワークを活用して拡販できるようになる。
さらに、BASFジャパンの正極材・電解液研究開発センター(兵庫県尼崎市)と協力しての製品開発に加えて、BASFのグローバルの研究開発拠点や生産拠点との連携も視野に入れているという。
BTBMが扱う正極材料は主に3種類ある。1つ目は、「最もエネルギー密度が高い」(阿武氏)とするニッケル系正極材(NCA)だ。このNCAを100%使って電池を生産している顧客もいるが、基本的にはニッケル系、コバルト系、マンガン系の3種類の材料をブレンドする三元系正極材料(NCM)に利用される。2つ目のマンガン系正極材料(LMO)は、電池の不具合の原因となる金属の不純物が混ざらない製造プロセスによる安全性と、歩留まりの高さによるコスト効率を特徴としている。
そして3つ目となるのが、先述した3種類の材料をブレンドするNCMである。「今後、電気自動車やプラグインハイブリッド車などに用いられる車載リチウムイオン電池には、NCMが広く採用されていく」(阿武氏)として、BASFのNCMの技術を積極的に取り入れた製品を展開する方針だ。
今回の合弁のメリットの1つに挙げられているのが、BASFの電池材料のラインアップに電解液があることだ。2012年2月にMerck(メルク)から買収した事業である。阿武氏は、「将来的に、より高い電圧/エネルギー密度の正極材料を開発する上で、電解液とのマッチングは極めて重要になる」と強調する。
2020年にリチウムイオン電池材料で5億ユーロ
今回、BASFと戸田工業がBTBMを合弁で設立した背景には、2017〜2018年ごろにリチウムイオン電池市場が大幅に拡大するだろうという予測がある。会見に同席した戸田工業会長の久保田正氏は、「リチウムイオン電池市場が拡大する理由は3つある。1つ目は、鉛バッテリーやニッケル水素電池からの需要移行だ。2つ目は、電気自動車とプラグインハイブリッド車市場の拡大。3つ目は、新興国における電力網を補完するエネルギーストレージとしての需要喚起である」と説明した。阿武氏も、「電気自動車とプラグインハイブリッド車の市場が本格化すれば、モバイル機器よりもはるかに大きな需要になる」と期待を隠さない。
BASF本社でバッテリー材料 グローバル・ビジネス・ユニット シニア・バイスプレジデントを務めるラルフ・マイクスナー氏は、「2020年におけるリチウムイオン電池材料市場規模50億ユーロのうち、BASFと戸田工業でシェア10%、5億ユーロ(675億円)の売り上げ達成を目指したい」と述べている。
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