勤続17年の日米共同開発観測衛星「TRMM」が残した気象予測技術の進化:宇宙開発(3/4 ページ)
JAXAは東京都内で2015年4月上旬にミッション終了が予定されている熱帯降雨観測衛星「TRMM(トリム)」についての説明会を開催。宇宙から雨を観測する衛星として初の日米共同で開発されたTRMMは、約17年という当初の計画を上回る長期観測を続けてきた。今日の気象観測に大きな貢献を果たしたTRMMの功績を振り返る。
想定を上回る成果で運用期間の延長へ
TRMMが残した降水科学への貢献の中でも特に大きいのが、17年間という長期観測を実現した点だ。17年間にわたって地球全体の降雨を定量観測したことにより、各地域の高精度な降雨推定マップや、従来の常識を覆す新事実の発見に貢献したという。
TRMMが開発された際、その設計寿命は3年2カ月とされていた。しかし、最終的に17年間にわたってミッションを遂行できた理由には、先述した高精度な降雨推定手法の確立など、TRMMによる降雨観測がもたらす科学的成果が、当初の想定を上回るほど大きいという背景があった。
その科学的成果の大きさが判明したことで、TRMMは2001年8月から、観測を行う衛星高度が350kmから約402kmに変更された。これは空気の濃度が薄くなるより高度な軌道を飛行することで、機体が受ける空気抵抗を低減して燃料の消費を抑え、運用期間を延ばすという判断だ。こうした高度の変更による燃料消費の抑制と、降雨レーダーなどの装置が当初の設計寿命を超えて十全に機能し続けたことがTRMMの17年間のミッションを支えた理由である。
高度の変更により、TRMMの長期的な降雨観測の見込みが立ったことで、TRMMから得られたさまざまなデータは、降雨測定手法の確立だけでなく、気象予報や台風進路予測、洪水予測といった現業システムでの利用が進んでいった。気象庁では2003年から2014年10月までの11年間にわたり、気象予測にTRMMのデータを利用していたという。
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