勤続17年の日米共同開発観測衛星「TRMM」が残した気象予測技術の進化:宇宙開発(2/4 ページ)
JAXAは東京都内で2015年4月上旬にミッション終了が予定されている熱帯降雨観測衛星「TRMM(トリム)」についての説明会を開催。宇宙から雨を観測する衛星として初の日米共同で開発されたTRMMは、約17年という当初の計画を上回る長期観測を続けてきた。今日の気象観測に大きな貢献を果たしたTRMMの功績を振り返る。
TRMMが残した功績とは
TRMMは低軌道衛星に分類され、運用初期段階では350kmの高度を軌道傾斜角35度で周回している。約90分で地球を一周して、1日に約16周回する。また46日毎に、同じ観測地点を同じ地方標準時刻で観測できる。TRMMはこうした特徴を持つことで、観測地点の降雨の日周変化といった定量的な観測を可能にしている。会見では、東京大学 大気海洋研究所 教授の高薮緑氏が、TRMMによる宇宙からの降雨観測が降水科学にもたらした意義について説明した。
TRMMに搭載されているJAXAが開発した降雨レーダーは、当時世界で初めて降雨の3次元観測を可能にしたものだという。高薮氏はこの3次元測定により得られた成果の1つとして、層状雨と対流雨という異なる性質の降雨を地球規模で区別できるようになった点を挙げた。層状雨、対流雨は地上からの定点観測も行われているが、宇宙からの定量観測により、降雨による地表や気候への影響を地球規模で詳細に分析することが可能になったという。
複数のセンサーを搭載したことで降水量推定手法の高度化に貢献
TRMMには降雨レーダーだけでなく、降雨観測装置としてマイクロ波放射計も搭載されている。降雨レーダーは、照射したレーザーが雨粒や氷粒によって反射されるのを観測する、能動型のセンサーだ。一方でマイクロ波放射計は、雨粒や氷粒から放射・散乱される電磁波を受け取る受動型のセンサーである。
こうしたセンシング方式の違いによって、降雨レーダーとマイクロ波放射計では降雨量の推定値に差異が生まれる。従来、衛星観測ではマイクロ波放射計が利用されていたが、TRMMでは世界初となる衛星用の降雨レーダーを搭載したことで、複数の分析データを利用するより高精度な降雨推定手法の確立に貢献したという。
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