3DスキャナとCADを使って、大正時代の建築文化財を3Dデータで再現:CADニュース(2/2 ページ)
下関市、NTTファシリティーズ、オートデスク、トプコンは、2014年から進めていた文化財の3次元化プロジェクトが完了したと発表した。設計・建設時だけでなく管理・運用面にもBIMモデルを活用するモデルケースにしたいとしている。
3次元データで現場がイメージしやすくなる
NTTファシリティーズ 営業本部 公共営業部長の阿久津好太氏は「新規設計にはBIMモデルがかなり使われているが、ファシリティマネジメント(建物の効果的な維持・運用)の領域についてはまだまだこれから」だという。BIMデータを作成することによって、施設の運用、維持管理や、学術研究の各分野でメリットがあるとしている。
3次元データを外部に公開するメリットとしては、建築物を訪問する前にバリアフリーの状態が確認できることを挙げた。例えば「手すりの有無」や、「車いすが移動可能な一定以上の幅があるか」などを3次元データを見ることで確認できる。
点検作業や修繕工事などにおいては、「脚立が必要かどうか」「作業スペースが確保できるかどうか」が重要だ。3次元データを見れば一目でそれが分かり、無駄な作業がなくなる。またコミュニケーションツールとしても使える。「例えば現地から『雨漏りだ』と報告を受けて修繕を手配したら、実は配管の問題だったということもある。双方が3次元モデルを見ながら確認することで、現地に行かなくても正確に状況を把握できる」(阿久津氏)。他にも大がかりな補修工事の施工計画や、防災設備、AEDの適切な設置場所の検討・説明にも使用できる。また防犯カメラの設置で、死角がなるべくない適切な場所を検討するのにも有効だとする。
展示企画においても3次元モデルを利用できる。3次元モデル上に展示物を配置することで、あらゆる角度からの見え方や、日照のシミュレーションが可能だ。
学術研究分野での利用例も紹介した。たとえ現物を保存できなかったとしても、建物の形状の独自性から設計者を推定したり、装飾を全て3次元データで残したりといったことの価値は高いだろうという。また「2次元図面では中に入った時の雰囲気やスケール感などは全然分からない」(阿久津氏)。そういったことも3次元モデルであれば体感できるようになるという。
実作業の所要時間は、点群データの取得は「計12人日」、3次元データ作成はオートデスクによれば「実質2日程度」だったという。NTTファシリティーズは、「日本には国、都道府県および市町村の指定する有形文化財が約1万4100ある」といい、「ビジネスとして興味を持っている」という。これらの一部でも後世に残したいというところがあれば、チームを組むことで比較的安価にサービスを提供できるとしている。
関連記事
- 歴史は3Dデータで後世へ――建築文化財の3Dモデルを運用・維持管理に活用
オートデスクは、山口県下関市にある「旧下関電信局電話分室」を3Dモデル化し、その3Dデータを建造物の運用・維持管理に役立てるプロジェクトに協力。2015年2月には大正時代の街並みと合成したリアルなCGとして一般にも公開される。 - 3次元設計を活用した「実証実験型オフィス」に潜入!
NTTファシリティーズは、同社の新たなR&D開発拠点「NTTファシリティーズ新大橋ビル」(東京都墨田区)の内覧会を開催。同社はこのビルを「実証実験型オフィス」と位置付け、実際にオフィスとして運用しながら研究開発中のさまざまな技術を検証していくという。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.