クリエーターと町工場をつなぐ台東デザイナーズビレッジとは:zenmono通信(3/3 ページ)
モノづくり特化型クラウドファンディングサイト「zenmono」から、モノづくりのヒントが満載のトピックスを紹介する「zenmono通信」。今回は、台東デザイナーズビレッジ 村長 鈴木淳さんが登場する。
enmono宇都宮氏 デザビレに入居される方はどのような方ですか?
鈴木氏 現在は24〜45歳の方が入居していて、8割が女性です。ファッション関係なので女性の応募者が多いですね。学生の時から商売を始めていた人が入居する時もあります。
enmono宇都宮氏 鈴木さんはメンタリングしているような感じなんでしょうね。コーチする感じでもないし、カウンセリングというだけでもないし……。
鈴木氏 そうですね。人により、それぞれです。デザビレの場合は半年に1度、事業報告書を出してもらって面接をしているんですが、最近は人生相談が増えているかもしれないですね。3年間で事業規模を拡大して、それだけで食べていけるように一本立ちしていくわけですが、皆、「(町)工場との付き合い方」が課題になります。クリエーターの仕事は「ロットが少ない」「続くかどうか分からない」「仕様書が変」、いろいろあるので工場側は受けたくないのです。
enmono宇都宮氏 そこの仲立ちもされているのですか?
鈴木氏 織物工場や宝石工場など、よく工場見学に行きます。現場を見たり職人さんの仕事を体験したりすると、「すごさ」が分かって尊敬の念が湧いてくる。そこまで理解して「一緒にやりましょう」と言うクリエーターなら工場も歩み寄ってくれますから、工場との関係性づくりが大切だと思っています。
鈴木氏 これは、工場見学でクリエーターと工場が仲良くなったところから生まれたネクタイです。クールビズの影響でネクタイ織物業界が今、空前の危機になっているんですね。それを知ったクリエーターたちが工場に行った後に女性向けのネクタイを開発して、これがヒット商品になりました。1本1万数千円するものが何百本も売れるんですよ。
enmono宇都宮氏 それは工場もうれしいですね。作家さんのクリエイティビティが刺激されるというのもあるし、工場側は気付かないんですよね。
鈴木氏 こちらは、職人さんが宝石を研磨する現場を見たクリエーターが考えたアクセサリーです。宝石って仕上げ磨きをしないと、つや消しみたいな状況なんですね。これがカワイイと、磨き途中のものを商品にしてしまった。こういうのは多分、職人さんだと気付かないのだと思いますね。
enmono宇都宮氏 これに価値があるとは思わないじゃないですか。
鈴木氏 まだ出来上がっていないと思っていますよね。
enmono宇都宮氏 工場の方もそういった価値を知ることによって、とても刺激になりますね。
鈴木氏 創業もそうですが、ビジョンを示して仲間と「一緒にやろう」となった時、パワーが出ます。私は常々、「ブランドづくりとは、商品を売るんじゃない。ファンを増やすことだ」と言っています。モノ以外の、支えてくれる土地だったり、自分自身も全部ひっくるめてブランドだと。日本のモノづくりって、ずっとモノだけで勝負しようとしていたと思うんですけれども、「この人が作っているから好きなんだ」とか、「この地域で作っているから好きなんだ」、「こんな思いを持っているから好きなんだ」という、モノ以外にまつわる人だとか地域だとか歴史だとかを含めて好きな人、「モノづくり好き」をどれだけ増やせるかが、日本のモノづくりの未来にかかっているような気がします。
enmono宇都宮氏 ありがとうございました。
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