より速く、より柔軟なビジネス基盤に! SAPがERPを23年ぶりに刷新:製造ITニュース
SAPジャパンは、次世代のビジネススイートとして「SAP Business Suite 4 SAP HANA(以下、S/4 HANA)」を発表した。データベース基盤を同社のHANAに限定しデータ構造を変革したことで、リアルタイムの情報をベースにタイムラグを抑えた分析や判断を実現するという。
SAPジャパンは2015年2月6日、次世代のビジネススイートとして「SAP Business Suite 4 SAP HANA(以下、S/4 HANA)」を発表した。
SAPでは、ビジネス基盤となるERPパッケージを展開。1992年には現在展開している「SAP ERP」や「SAP Business Suite」の基盤となる「R/3」をリリース。今回のS/4 HANAはこのR/3以来の23年ぶりの大刷新となる。
SAPでは、高速処理を行えるインメモリデータベースとして2011年に「HANA」をリリース。その後、さまざまな機能拡張を進めてきた。現在グローバルではHANAの導入決定企業は6000社を超えており、その内1850社がERPを中心とした業務アプリケーション群の「Business Suite(以下、ビジネススイート)」を採用。既に日本でも新規のビジネススイート導入企業の82%がHANAベースのシステムの導入になっているという。
従来のERPでは実現できない価値
また一方で従来型のERPが構造的に、変化するビジネスシーンに合致しないケースも出てきていたという。SAPジャパン 代表取締役社長 福田譲氏は「例えば、小売業を考えた場合、売り場のどの製品が売れ始めたという情報はERPは把握している。またそれがいつ切れて、何時までに配送すれば欠品しないで済むという予想はデータとしては持っている。しかし、従来のERPはアーキテクチャとしてトランザクション(業務において不可分な処理を一まとめにしたもの)を記録するシステムだから、これらの情報を把握していてもリアルタイムのアクションに結び付けることができなかった」と問題点を指摘する。
また、システムとしても以下の5つの問題点を抱えていたという。
- 処理システムとしてトランザクション処理を中心としたOLTP(Online Transaction Processing)とデータベース解析を行うOLAP(Online Analytical Processing)が分かれており、一元的な処理が行えない
- PCベースの情報となっておりPCの前に座らないと情報が分からず、アクションにつなげることができない(アクションのラストワンマイル)
- 自社内だけでなく他社を含めたビジネスネットワークの視点がない
- 完全なリアルタイムを実現できない(情報を処理するためだけのタイムラグが発生)
- 基幹システム同士の連携が難しい
これらの問題点を解決するものとしてS/4 HANAを新たにリリースする。大きな特徴となるのがデータベースをHANAに限定したことだ。HANAの最新のインメモリおよびリアルタイム機能を最大限に活用。また合わせてデータモデルを変更したことで、データ量そのものを大幅に削減することに成功している。これらにより、大幅な高速化を実現できたという。
SAP エグゼクティブバイスプレジデント プロダクト&イノベーション S/4HANA責任者のヴィーランド・シュライナー(Wieland Schreiner)氏は「例えば、ERPで7.1テラバイトのデータベースが必要だったのを0.8テラバイトに圧縮することに成功した例もある。在庫管理におけるスループットでは推定調査によると約7倍のパフォーマンスを実現できた」と述べている。
また、従来はBIツールにより情報を解析してアクションにつながる知見を引き出してくる必要があったが「ERPによるリアルタイムの情報をベースに解析できるようになり、限りなくタイムラグを抑えてアクションに結び付けられる」(シュライナー氏)という。
福田氏は「既にHANA上でビジネススイートを導入している企業、新規の企業はS/4 HANAの導入が早いだろう。2015年末までに100件以上の顧客の移行を目指す」と話している。
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