IoTによる“家電ビジネス革命”は実現するのか:モノづくり最前線レポート(2/3 ページ)
ハイアールアジアは戦略発表会を開催し、新製品とともに白物家電をベースとした新たなビジネスモデルを提案した。同社では「家電業界に革命を起こす」(ハイアールアジア 代表取締役社長兼CEO 伊藤嘉明氏)とし、3つの戦略をベースに家電ビジネスの在り方そのものの転換に取り組む。本稿では特に「家電の新たなビジネスモデル」に特化して紹介する。
家電を利用した新しいビジネスモデル
同社が「家電を利用した新しいビジネスモデル」の基軸に据えているのが家電のIoT活用によるサービスビジネスの展開だ。家電製品は先述した通り、買い替えが中心の成熟市場となっている。また一度販売した場合、次に買い換えるまで8〜10年間の期間があり、その間はメーカーと消費者の関係性が断たれてしまう。この状況を打破するため「この8〜10年の利用期間に新たな価値を提供することで新たなビジネスモデルを構築できないか」というアプローチで取り組む新たな家電シリーズが「DIGI(仮称)」だ(関連記事:製造業は「価値」を提供するが、それが「モノ」である必要はない)。
「DIGI(仮称)」は、ハードとしての家電をサービスの1つの構成要素と捉え、家電ビジネスを従来の売り切り型のモデルとして構築するのではなく、サービス型のビジネスモデルへと切り替えていくというものだ。さらにサービス面でも従量課金型ではなく、一定期間の契約に対して課金するサブスクリプション型のビジネスモデルの構築を目指す。
冷蔵庫でペットを飼う?
その一例として示したのが、冷蔵庫前面全てに液晶ディスプレイを搭載した冷蔵庫だ。「モノを冷やす」という機能とともに、液晶パネルとインターネットを活用することで、新たな付加価値を提供することを目指す。例えば、冷蔵庫のデザインを気分によって変更するようなサービスや、冷蔵庫でバーチャルペットを飼うようなサービスなどを検討しているという。また、高齢者の一人暮らしの過程に向け、子どもがサービス機能付き冷蔵庫を購入してあげ、稼働状況から安否を把握する「見守りサービス」なども検討する。
その他、冷蔵庫内をスキャンして賞味期限を把握し、顧客のスマートフォンに情報を提供するようなサービスや「普及台数が増えてくれば、このディスプレイを広告として活用するデジタルサイネージのような取り組みも生まれるかもしれない」と伊藤氏は展望を示す。
冷蔵庫ではなく「冷やしたモノ」を提供する
新たなサービスとして実証実験を開始しているのが「オフィス向け冷凍食品販売サービス(off-ice)」だ。同社のフリーザーをオフィスに設置しそのフリーザー内に置いた食品の販売で継続的に収益を上げるというビジネスモデルだ。都内中心部で実証実験を開始しており、サービスの実現を目指すという。
「冷蔵庫を販売する」という考え方ではなく、「冷蔵庫で冷やしたモノを販売する」という考え方に立つビジネスモデルが特徴となる。同様のビジネスモデルは古くは「富山の薬売り」や最近では「オフィスグリコ」などが、サービスとして実現させているが、冷蔵庫を販売する家電メーカーが自らのビジネスモデルのパラダイムシフトにチャレンジするという意味ではユニークな取り組みだといえる。
また、ネットワーク接続された液晶ディスプレイを活用する「デジタル額縁」とそのコンテンツ提供サービスなども事業化を検討する。液晶ディスプレイについては「損益でマイナスにならない程度の低価格」(伊藤氏)で提供し、コンテンツ配信により継続的に収益を目指すビジネスモデルだ。同サービスについてはまだ「本格サービスの提供開始は未定」(同社)としているが、個人での利用の他、飲食店やホテルのようにレイアウトやインテリアをシーズンごとに変更する必要のある場所での利用を提案していく。第一弾のコンテンツとしてはロックミュージシャンの写真などを取りそろえた「Rock Paper Photo」を提供する予定だという。
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