富士通は2015年1月19日、社長交代人事を発表した。現代表取締役社長である山本正已氏は代表取締役会長となり、新たに現執行役員副社長(2015年1月19日付けで執行役員常務から昇任)の田中達也氏が社長に昇任する。正式決定は同年6月22日開催の定時株主総会後となるが、同年4月1日から実質的に田中氏が指揮を執ることになる。
現社長の山本氏は2010年の社長就任で現在は5期目となる。2014年5月には2016年度(2017年3月期)までの中期経営計画を発表したところだったが「どの社長も同じだと思うが、社長就任時から後継者については考えてきた。5年間という任期は区切りのよい期間だということも1つの要因としてあるが、富士通という企業がグローバルカンパニーとして真の成長を遂げるためには、このタイミングで会長と社長の2頭体制にし、社内と社外両面が固められる体制にすることが重要だと考えた」と山本氏は語っている。
任期の5年間を振り返り山本氏は「社長に就任した2010年は、リーマンショック以降の経済の停滞期であり、苦しい状況をどう立て直すかという時期だったといえる。経済全体が大きなダメージを負う中、富士通についてもこのままでは将来の成長にはつながらないという状況に陥った。そのためこの5年間は富士通が再び大きく成長する礎を作る期間だったと考えている。さまざまな構造改革を実践する中で再び成長するためのベースラインを作ることができた」と手応えについて語っている。実際に任期中は半導体事業の再編を進めた他、ユビキタスビジネスやキャリア向け携帯電話事業の構造改革、本社・間接部門や海外部門の効率化など、数多くの構造改革に取り組んできた。
真のグローバル化を実現
また、新体制についての期待としては「田中氏を選出したのは変革への意欲と行動力がある点とグローバルでの豊富な経験を持つ点。また果敢な判断を行う“胆力”なども評価されたポイントだ。社内の基本的な執行についてのいわば“内政”の部分は新社長に担ってもらい、会長職としては社長職をサポートしつつ対外的な“外政”に取り組むことになる」と山本氏は述べている。
新社長となる田中氏は1956年9月11日生まれの58歳。1980年に富士通に入社し、国内営業を中心に経験を積んだ。2003年4月に中国法人である富士通(上海)への異動に手を挙げ、中国ビジネス拡大の実績を上げた他、2009年には産業ビジネス本部長代理(グローバルビジネス担当)、2012年には執行役員兼産業ビジネス本部長となり、主に大手製造業に対する営業活動の統括を行ってきた。さらに2014年4月には執行役員常務兼Asiaリージョン長となり、アジア地域に向けた営業活動をまとめるなど、一環して海外および営業畑を歩んできた人物といえる。
新社長就任後も当面は山本氏の経営方針を踏襲する見込み。2016年度までの中期計画についても現状では、変更しない予定だ(関連記事:富士通、PC/携帯電話機生産は現状維持――三重工場分離は「2014年度内に仕上げる」)。田中氏は「山本氏の方針を引き継ぎつつ、さらなる成長を実現していく。経営の最大の課題として“グローバル化”という点があると認識している。今までアジアで取り組んできた実績を基に、グローバルでの成長を加速させたい。またICTベンダーとして専門力を高めていく」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 富士通のPC工場、勝利の方程式は「トヨタ生産方式+ICT活用」
コモディティ化が進むPCで大規模な国内生産を続ける企業がある。富士通のPC生産拠点である島根富士通だ。同社ではトヨタ生産方式を基にした独自の生産方式「富士通生産方式」を確立し、効率的な多品種少量生産を実現しているという。独自のモノづくりを発展させる島根富士通を小寺信良氏が訪問した。 - 富士通、製造業支援を強化――3Dプリンタ試作やビッグデータ分析、製造受託も
富士通は、同社が展開する製造業向けの支援サービス「もノづくりソリューション」を体系化。ビッグデータ分析や製造受託などの新サービスを加え、事業として強化していく方針を示した。 - 「半導体事業再編は苦渋の決断」、富士通セミコンの従業員数は2000人以下へ
富士通は、子会社の富士通セミコンダクター(富士通セミコン)が手掛ける半導体事業の大規模な再編を発表した。再編によって、富士通セミコンの従業員数は最終的に2000人以下まで削減されることになる。 - レタスを作る半導体工場!? 植物工場は製造業を救う切り札になるのか
「半導体生産からレタス生産へ」驚きの業態変化を遂げた工場がある。富士通セミコンダクターの会津若松工場だ。富士通では植物工場へのICT提供などを行ってきたが、ついに自ら野菜生産に乗り出し、2014年2月から低カリウムレタスの出荷を開始する。製造業およびICT企業としてのノウハウを野菜生産に注入する植物工場は、製造業が託すべき未来になるのか。現地取材を通してレポートする。