「強敵」と書いて「とも(友)」と読む、まさに王道の展開〜「リアルロボットバトル 2014」密着取材リポート(後編):『ロボット日本一決定戦!リアルロボットバトル』の舞台裏(3/3 ページ)
2mの巨大ロボットが本気で殴り合う、2014年年末特番「ロボット日本一決定戦! リアルロボットバトル」の舞台裏に潜入。テレビには映らなかった、「強敵」と書いて「とも(友)」と読む、まさに王道の展開とは。
今回もROBO-ONE勢同士の決勝戦
そして迎えた決勝戦は、キングカイザーと風神という組み合わせになった。だが、開始予定の時刻になっても試合がなかなか始まらない。キングカイザーの電気回路のどこかがショートしており、電源が入らないというトラブルが発生していたのだ。
手堅い丸氏の設計もあり、キングカイザーシリーズは基本的にマシントラブルが少ないロボットという印象なのだが、こんな大きなロボットでも丸氏が1人で作っているため、修理となるとちょっと大変だ。そこで自然と手伝いに入ったのが対戦相手である網野氏。
機体が故障したとき、敵味方関係なく、みんなでああだこうだと修理するのは、実はROBO-ONEでは良く見かける風景だ。しかも両者は10年来のロボット仲間でもある。周囲にいたROBO-ONEの実力者も集まり、キングカイザーの"大修理大会"が始まるのは自然な流れだった。そして2時間後、ついにキングカイザーが復活。決勝戦が始まった。
第1ラウンドは1対0でキングカイザーが僅かにリード。キングカイザーはカイザーブレードを盾にして、風神の乱風ガトリングを防いでいたが、第2ラウンドのブーストタイムで1対1に追いつかれてしまう。しかし、ここからが本領発揮。マスタースレーブの利点を活かして的確に攻撃を決め、あっという間に5対1と突き放すことに成功した。
だがこれで終わらないのがリアルロボットバトル。残り15秒で再びキングカイザーの動きが止まり、メンテナンスの後、試合が再開したのだが、明らかに機体の調子が悪い。最後は棒立ちになり、風神の連続パンチを無防備に浴びながらタイムアウトとなった。風神の大逆転があるかも…というまさかの展開だったが、計測の結果、スコアは5対4で、風神の追い上げも僅かに届かず。マルファミリーは悲願の初優勝を果たした。
キングカイザーの胸には5個のコアが付いているのだが、そのうちの3個が最後のラッシュで壊されていた。もう1個壊れていれば同点で延長戦、2個なら逆転だったわけで、本当に薄氷の勝利だったと言えるだろう。あと2〜3秒でも時間があれば、勝負の行方は分からなかった。丸氏は自身のブログで「風神との勝負の決着はついていない」と述べており、優勝はしたものの、満足できる戦いではなかったようだ。
ちなみに、対戦相手の修理を手伝うのはROBO-ONEでは珍しくないと先ほど書いたが、実はそれに関して、「手伝った方が負ける」というジンクスもある。結局、その通りになったわけだが、網野氏のフェアプレー精神は賞賛したいと思う。この勝負に敗者はいない。
今後の技術進化にも期待
今回はキングカイザーの優勝となったが、コアを破壊するという現状のルールにおいては、ロボットの操作方法はやはり、マスタースレーブ方式が有利だろう。事前に入力しておいた動きしかできないモーション再生方式では、様々な高さや向きに設置されるコア全てに対応するのは難しい。たくさんのモーションを用意することも考えられるが、使い分けるのはそれなりに大変だ。
しかしマスタースレーブ方式であれば、人間が状況を判断し、適切な動きを取ることができる。今回、準決勝で負けはしたが、MMSEBattroidの動きは素晴らしく、今後の可能性を感じさせた。追従性がさらに良くなり、もっと人間と同じような動きができるようになれば、より見応えのある試合が見られるだろう。「Ver.0」という名称に、「真価はこれから」という意志が感じられる。ぜひ「Ver.1」に期待したいところだ。
その他、計算機の支援による自動追尾攻撃も有力な方法だと思う。画像認識などの技術でコアの位置を把握し、腕の各関節の角度を計算すれば、コアがどこにあってもパンチを正確に当てることができる。これまでのところ、高精度にこれを実現したチームはいないのだが、もし完成度の高い自動追尾システムができたら、かなり強力になりそうだ。あと数年もしたら、完全自律のロボットもできるかもしれない。
気になるのは「第3回があるのかどうか」ということだが、日本テレビによれば、現時点では「未定」とのこと。優勝した丸氏を始め、何人かの出場者が「次回」への意気込みを語っていただけに、ぜひ続けてもらいたいところだ。
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