CAEやCADで本格活用!? 性能の波が小さくデータを海外に出さないクラウド始動:製造ITニュース
日本IBMは、クラウド基盤サービス「SoftLayer」の新たなデータセンターとして東京に「東京データセンター」を開設したことを発表した。SoftLayerはベアメタルサーバ(物理サーバ)が利用できることで、CAEやCADなどのアプリケ―ションでの活用で注目を集めてきたが、今回の東京データセンター開設により、国内からデータを海外に出さないクラウド運用が可能になる。
日本IBMは2014年12月22日、クラウド基盤サービス「SoftLayer」の新たなデータセンターとして東京に「東京データセンター」を開設したことを発表した。
クラウドサービスを活用するのに、製造業を含むB2Bでの活用において、セキュリティと情報漏えいの問題は最大の懸念点だ。そのためユーザー企業にとっては、海外のデータセンターに業務の中心となるデータを移行するのに大きな抵抗を持つケースも多かった。
日本IBM 執行役員 クラウド事業統括担当の小池裕幸氏は「金融や医療などガイドラインが定められている業界もある。またそのガイドラインがなくても警戒感が強く国内データセンターを求めるユーザーの声は大きかった。これらの要望に応えられる体制ができた」と語る。
東京データセンターは2014年12月22日8時にオープン。サーバ台数は1万5000台で、同時に日本語のWebサイトおよびテクニカルサポートなども開始した。テクニカルサポートは無償で24時間365日の提供(日本語対応は平日9〜17時)となる。
合わせて、以前から用意していた業界業務別の11のプロファイルに加え「組み立て加工業プロファイル」「中小プラント構築業プロファイル」「運輸業プロファイル」「アパレル業プロファイル」「製造業IT−BCPプロファイル」「Connected Vehicleプロファイル」の6つのプロファイルがパートナーから追加。合計17の業界や業務に合わせたプロファイルが用意されたことになる。
既に東京データセンターの採用を決定した企業も多く存在しており、製造業ではホンダやマツダ、リコーなどが採用を決めているという。
“ゆらぎ”の少ない物理サーバ活用
SoftLayerはもともと独立クラウドベンダーだったが、2013年7月にIBMが買収し、IBMのクラウドサービスに加わった。その特徴の1つとなるのが、物理サーバをクラウド経由で利用できるという点だ。
クラウドサービスは先述したセキュリティの問題の他、1つの物理サーバに複数のユーザーのサーバ環境が同居する状況になるため、アクセスの集散状況によって、パフォーマンスが一定しないという課題があった。そのためCAEなど高度な演算処理を必要とする場面では、計算時間が一定せず、実際の現場では使いにくい状況があった。しかし、SoftLayerは、ベアメタル型で物理サーバを構築でき、かつそれを時間制課金により提供できることで、パフォーマンスの“ゆらぎ”を抑えることが可能だ。同社では、今回の東京データセンターの開設により、クラウドサービスにおける、パフォーマンスの問題、セキュリティの問題という2つの大きな課題を抑えられるとしている。
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