「設計を抜本的に変える」、クラウド利用で構想設計をもっと自由に:米ソリッドワークスのプライベートイベントより(1/2 ページ)
米ソリッドワークスは、プライベートイベント「SolidWorks World 2014」で、クラウドベースの構想設計ツールを発表した。設計者同士、あるいは設計者と顧客が、クラウド上で構想設計のモデルを共有でき、リアルタイムに変更したり新しいモデルを追加したりできる仕組みだ。
米ダッソー・システムズ・ソリッドワークス(以下、ソリッドワークス)は、2014年1月26日(米国時間)より、米国カリフォルニア州サンディエゴでプライベートイベント「SolidWorks World 2014」を開催中だ。同社のパートナーやユーザーなど、参加者は5600人にのぼる。
構想設計をクラウドでシェア
1日目の基調講演でソリッドワークスは、新製品「SolidWorks Mechanical Conceptual」(以下、Mechanical Conceptual)を、2014年4月2日から発売すると発表した。価格は月額249米ドル(249ユーロ)。ただし、日本での発売は現時点では未定となっている。
Mechanical Conceptualは、クラウドベースで提供される設備機械向けの構想設計ツールである。仏ダッソー・システムズが提供する「3DEXPERIENCE platform」の1つという位置付けで、Mechanical Conceptualはダッソー・システムズのクラウド上に構築されている。2013年に行われた「SolidWorks World 2013」で初めて披露されたが(関連記事:おばか製品で説明しよう。 「SolidWorks 2014」の新機能)、この時はMechanical Conceptualの内容のみに触れただけで、発売時期や価格は未定だった。
一般的に、構想設計は手描きのポンチ絵や2次元CADで行う。だが、これでは3次元CADで詳細設計へと移る際に、構想設計図から形状や寸法関係を書き出す手間が増える。そうかといって、いきなり3次元CADで構想設計を行おうとすると、創造性が妨げられる場合もある。そうしたジレンマを解消するのがMechanical Conceptualだ。
Mechanical Conceptualでは、ポンチ絵や2次元CADで描くのと同様の感覚で、機構動作を認識できる3次元モデルを簡単に作成できる。さらに、そのモデルをクラウド上で共有できる点が最大の特徴である。
例えば、米国西海岸のサンディエゴと東海岸のボストンにいる設計者が、Mechanical Conceptual上で構想設計のモデルを共有し、チャット機能を使ってリアルタイムで構想を変更したり、新しい構想を追加したりできる。
「Mechanical Conceptual」の画面。右側では、この構想設計のモデルについて、設計者たちがチャットをしている様子が示されている。Mechanical Conceptualと、3次元CAD「SolidWorks」はユーザーインタフェースがほとんど同じである。
モデルを共有できるのは、同じ会社の設計者だけとは限らない。基調講演に登壇したMechanical Conceptualのテストユーザーは、顧客もMechanical Conceptualにログインできるようにして、構想設計のモデルについてフィードバックをもらうようにした。その結果、概念設計の段階で既に顧客の要望通りの物が出来上がり、市場投入への時間を約半分に短縮できたという。User Experience and Product Portfolio Managementのバイスプレジデントを務めるAaron Kelly氏は、「構想設計の段階から顧客とともにモノづくりができるようになる」と、Mechanical Conceptualの特徴を強調する。
基調講演でMechanical Conceptualを使用した感触を語ったテストユーザーたち。「新しいアイデアを次々に投入できた」「アセンブリ向けのツールのアイデアをどんどん試すことができた」「アイデアを、より速く形にできた」といった声が聞かれた
データをクラウドに乗せることへの懸念をぬぐえないユーザーもいるだろう。テストユーザーの1人はそれについて、「われわれもその点は心配だった。だが、実際に使ってみると、そうした懸念よりも世界中どこからでも構想設計のモデルにアクセスできて、モデルを共有できるといった利点の方がはるかに勝っていた」と述べている。
ユーザー層の裾野を広げる
ポンチ絵や2次元CADの要領で描いたモデルはアセンブリになり、次の工程である3次元CADに移行して詳細設計に入る。「SolidWorks」以外の3次元CADにもエクスポートが可能だ*)。前述した通り、Mechanical Conceptualは設備機械向けのツールである。設備機械は従来からSolidWorksが強かった分野ではあるが、SolidWorks以外の3次元CADにもエクスポートが可能ということは、同分野でまだ取りきれていないユーザー層を獲得するための手段であるようだ。
*)ただし、やはりMechanical ConceptualとSolidWorksを組み合わせて使用するのが、構想設計のモデルの整合性が最も取れるようだ。
Kelly氏は、Mechanical Conceptualの4つの柱は「概念的(Conceptual)、直観的(Instinctive)、ソーシャル(Social)、接続性(Connected)」だと説明する。つまり、「アイデアをどんどん出し、直観的な操作が可能なツールを介してそれらのアイデアを形(設計)に変える。そうしたデータを共有し、いつでもどこでもデータにアクセスして、設計者同士、あるいは設計者と顧客の共同作業を促進する」ということだ。「Mechanical Conceptualは、設計の在り方を抜本的に変えるだろう」(Kelly氏)。
製造業、3つのトレンド
基調講演には、ソリッドワークス CEOのBertrand Sicot氏も登壇した。同氏は製造業における今後のトレンドとして次の3つを挙げた。「1つ目は、モノづくりが変わってきていること。3Dプリンタへの関心が急速に高まってきたことが一例として挙げられる。2つ目は、モノのインターネット(IoT)のように、あらゆる製品がネットワークにつながる“スマート化”が進むこと。ここでメカトロニクスが果たす役割は大きい。3つ目はビッグデータだ。膨大なデータから何を得られるかを模索しなくてはならない」と話し、「設計とは、売り上げを拡大できる方法とも言える」と語った。
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