シートベルトはドライバーに何とか着用してもらうために進化した:いまさら聞けない 電装部品入門(16)(2/5 ページ)
自動車の安全システムとして長い歴史を持っているのがシートベルトだ。現在は、装着するのが当たり前になっているが、ここまで来るのにさまざまないきさつやシステムの進化があった。また、衝突事故時に乗員を座席に固定するプリテンショナーをはじめ、今でも進化を続けているシステムでもある。
シートベルトを構成する部品
義務化に至ったいきさつや仕組みをお話しする前に、せっかくですのでシートベルトの構成部品について簡単に触れておきたいと思います。
まずはシートベルトのストラップ部をお見せしましょう。
現在の主流は、引っ張り強度に優れるポリエステル素材を幾重にも編み込んで頑丈にしたものが材料に採用されています。
その強度は乗用車1台を引っ張り上げても切れないほどであり、最大数トンともいわれる衝突時の力が加わっても切れない構造になっています。
また、一定以上の力が加わると素材自体が伸びるようになっており、人体への影響を少しでも緩和するための工夫も施されています。
強度だけを優先するならば素材の編み込み量を増やせばよいのですが、衝撃力をある程度緩和できるだけの弱さも兼ね備えていなければ、全ての衝撃力を人体(の上半身)で受け止めることになります。強すぎても駄目なのです。
直接人肌に触れることも多々ある部品ですので、肌を刺激しない優しい触り心地も求められます。
次はシートベルトのバックル&タングです。
ストラップ同様に数トンもの衝撃を受けても壊れない頑丈さに加え、容易に着脱できることが求められます。
また繰り返しの着脱によって著しく摩耗してしまうと強度低下に直結するため、自動車が廃車されるまで余裕を持った強度を保ち続ける耐摩耗性、耐腐食性も求められます。
最後にリトラクター(ベルト巻き取り装置)です。
1987年(昭和62年)に緊急ロック式巻き取り装置(ELR:Emergency Locking Retractor)の設置が義務付けられています。この仕組みを簡単に触れておきましょう。
ロックの機械的仕組みはさまざまありますが、私のクルマの後部座席に搭載されていた可動切片式を例に取ってご説明します。
普通にシートベルトを装着している時やベルトを引き出す時には可動切片は浮いていないため、巻き取り部内周に施されたギヤに触れることなく回転できます。
しかし衝突時などのように、急激にストラップがリトラクターから排出されるような場面になると、可動切片が浮いてギヤにかみ込みます。
するとストラップの排出が阻害され、ロック状態(引き出せない状態)になります。
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